【文スト】空から落ちた薄倖美人３

恋、と書いてその後書けなくなった。 ページ28

「先に断っておくけど、何も僕は人殺しがしたいわけじゃない。」


谷川が顎を少し斜めに上げ、余裕そうな表情でそう嘯き、両手をひらひらと敵意が無いよとでも言いたげに見せてみせる。そして「そういった愚かな連中には成り下がらないと決めているんだ。」と少し強めに言い中也と太宰を見る。その爬虫類独特の猫目に似た目を細め冷めた表情を送る。
現在のポートマフィア幹部とかつてのポートマフィア幹部への軽蔑の表情だった。

「だから君達が身を引いてくれるなら見逃す事もできるけど？ 」


その言葉はAから身を引け、という事だった。
人智を超えた存在となった谷川に中也と太宰は些か同様はしていたもののその言葉にすぐに冷静さを取り戻した。
中也が異能を解放して地面を踏み締める。コンクリートにはヒビが入っていき、強大な重力の渦が中也に現れる。
勿論太宰の瞳もすぐ冷たい眼差しが戻り、懐に忍ばせた銃をすっと取り出す。


「莫迦云ってんじゃねーよ。命に変えてでも守りたい奴を守りきる。それが男っつーもんだろーが。」

「癪だけど同感だね。とゆーことで私達は身を引くつもりは無いよ。このまま酸化する世界の夢から醒めるのもいいけど、私にはやり残した事があってね。まだ死ぬわけにはいかない。」

「ふぅーん。それは大層なことですね。」


谷川はペロリと人並外れた長く細い舌で唇を舐め、顎に手を当て撫でながら考えるように斜め上を見る。

「だけどまあ、そうですね。そのほうが良いですね。」

谷川はそう言って笑った。

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