《蒼い空》 ページ4
その頃、海常高校の職員室ではバスケ部の顧問の武内先生と一人の女子生徒が話していた。武内先生は日本史を教えていることからか、図書委員担当の先生だ。どーんと構えた大きな腹を持つ武内先生の前で、女子生徒は眉を顰めた。
「と、いうことで明日の図書委員を代わってやってくれないか?明日の担当の奴が熱で来れないらしくてな。」
「明日は土曜日ですよ?わざわざ本を借りに来る人なんているんですか?」
「まぁそういうな夕凪。これは規則なんだよ。」
夕凪と呼ばれた黒縁メガネの女子生徒は眉をひそめた。耳の下で束ねられたお団子の髪がフワフワと隙間風に揺れる。
武内先生は彼女に「この通りだ。夕凪にしか頼めないんだ。」と、顔の前で手を合わせる。心底めんどくさいが、yesの返事が出るまで粘られそうな気がして小さく溜息を吐いた。
「……明日は午前中は用があるので、午後からでもいいなら。」
「そうか!よかった!」
彼女の心情など露知らず、武内先生はホッとしたように笑った。そして彼女の手を取り「ありがとな!」と何度も繰り返しながら手を振った。上下に振られる腕が痛い。
その時、後ろで職員室のドアが開く音が聞こえた。
「失礼します。バスケ部です。武内先生いらっしゃいますか?」
「おお、笠松。」
武内先生に訪問者のようだ。彼女は俯いて「では、明日午後2時頃に行きます。」とだけ呟いて職員室の出口へと向かう。
「分かった、夕凪本当にありがとな。」
バスケ部主将の笠松とすれ違う瞬間、顔を背けながらも軽く会釈をして職員室を出た。
「あーぁ。」
彼女は長い廊下を歩きながら呟いた。窓の縁に四角く切り取られた空の蒼は美しくて、そこを雲が悠然と流れていた。
中学の時も、こんなふうに空を眺めた記憶がある。隣には友人がいて、とても騒がしくて。暖かくて、優しい記憶。昔のことを思い出して彼女は唇を噛んだ。戻れるならもう一度戻りたい。
「…かえろ、」
彼女は一言呟いて下駄箱へと向かった。
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藤織 藍沙(プロフ) - すっごく面白いです!更新頑張って下さいね! (2015年7月31日 8時) (レス) id: dd65d1f829 (このIDを非表示/違反報告)
舞香(プロフ) - 更新、頑張ってください!まだかまだかと楽しみにしています!笑応援してます! (2015年6月22日 0時) (レス) id: 8017bac195 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - ハートの時計さん» コメントありがとうございます! これからも頑張っていきますので、宜しくおねがいします! (2015年4月9日 6時) (レス) id: b9de7aef37 (このIDを非表示/違反報告)
ハートの時計(プロフ) - 面白いですね(⌒▽⌒) 頑張ってください (2015年4月9日 0時) (レス) id: 2c10ee03cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海姫 | 作成日時:2015年2月27日 17時