《暖かな笑顔に毒される》 ページ29
「あーゆーことされると困るんですけど。」
ニコニコと笑いながら手を引く黄瀬に、Aは不快感を丸出しにして呟いた。すると黄瀬は階段を上りながら心底不思議そうな顔をした。
「え、なんで。」
「なんでじゃないわよ。目立つじゃない。私、今まで目立たないように全力を尽くしていたのよ。」
「もう俺にバレたんだからいいじゃないっスか！ 目立っても！ 」
「…そーいう問題じゃないから。」
黄瀬は「ふーん、」と曖昧な答えを返した。お前が聞いたくせになんだその曖昧な返事は、と思ったがAは口を詰むんだ。
屋上につくと黄瀬が扉を開ける。暖かな夏混じりの風が二人の頬を撫でた。
懐かしかった。隣には友人がいて、屋上で感じる向かい風も、この感覚も、懐かしかった。
「懐かしいっスね。この感覚。」
「…そうね。」
見透かしたかのような言葉にAは、少しだけ素直に頷いてみた。
数秒の間二人は何も言わず風を感じていた。Aは段々居た堪れない気持ちになり「っていうか、何の用？ 」と言うと黄瀬は少しだけまじめな顔をして口を開いた。
「そりゃーAに会いたかったから！ 」
シャラッ☆ と効果音のつきそうなほど軽い言葉だった。あからさまに眉をひそめて「うっぜー。」と小さく呟いたが、一人で「キャー！ 」と照れている女子力高めな黄瀬には届いていない。それがいいことなのか悪いことなのかAにはわからなかった。
「で、本題は？ 」
「あぁ、お願いがあるんすけど。」
何となく嫌な予感がAの中で駆け巡る。この手の勘は鋭いほうだ。
すると黄瀬がニッコリと笑った。
「バスケ部のマネージャー、」
「拒否。」
「やって……、えっ！？ 」
Aは黄瀬の言葉に被せるように口を開いた。状況が掴めず、ぽかんと口を開けている黄瀬にAはもう一度力強い声で「拒否よ。」と言った。
「即答！？ ってかセリフ途中！ 」
「最後まで聞かなくても内容が分かっちゃったからね。先手必勝よ。」
「ちょっと待ってちょっと待っておねーさーん！ もしかしたらAが考えてるのと違うかもしれないっスよ！ 」
「じゃあ言ってみなさいよ。」
「じゃあせーので言おう！ 本当にAが思ってるのと一緒かどーか確かめるっス！ 」
「いいわよ、じゃああってたらジュース奢りなさい。」
「Aこそ。」
あと出しは反則っスよ。と笑う黄瀬にAは、上等よ。と笑った。
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藤織 藍沙(プロフ) - すっごく面白いです！更新頑張って下さいね！ (2015年7月31日 8時) (
レス) id: dd65d1f829 (このIDを非表示/違反報告)
舞香(プロフ) - 更新、頑張ってください！まだかまだかと楽しみにしています！笑応援してます！ (2015年6月22日 0時) (レス) id: 8017bac195 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - ハートの時計さん» コメントありがとうございます！ これからも頑張っていきますので、宜しくおねがいします！ (2015年4月9日 6時) (レス) id: b9de7aef37 (このIDを非表示/違反報告)
ハートの時計(プロフ) - 面白いですね(⌒▽⌒) 頑張ってください (2015年4月9日 0時) (レス) id: 2c10ee03cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海姫 | 作成日時：2015年2月27日 17時
