同居人時変 【まふまふ】 ページ30
「かんっ……ぱーい!」
カンッ、とグラス同士がぶつかる音で、小さな宴の幕が上がる。
……いや、宴なんて立派なもんじゃない。私とまふの、ただの二人飲み会。
「ふふっ、今日も一日お仕事お疲れ様」
なんて言ってゴクゴクお酒を飲むのは、同居人のまふ。取っ掛かりが早い気がしてならない。
「本当疲れたわ……っていうか、まふいい加減引きこもりやめなよ」
いつ頃からよ? と半ば恨みを込めた視線を送っても本人はどこ吹く風。
「いやぁ最近は日中家が広くかんじられることこの上なくて」
なんて言って照れたような笑み。
「ああ、そうだねぇ。
……ついに『非リア同士』のシェアハウスも、私とまふの二人のみになったからね」
そう。最初からまふとだけ暮らしていた訳ではない。もっと人がいたのだ、この家には。
中学時代から仲の良かった友人数人(全員恋人なし)で、
「ぼっちも皆でいれば怖くない」的な謎の流れで、シェアハウスを始めた。
それがいつの間にやら彼氏と同棲始めるだの、彼女と一緒に住むだので、
置いてきぼりを食らったまふと私。
「畜っ生〜、いつになったらぼっち回避出来るんだ私達は!!」
グイッ、とビールをあおった時に、まふが一言、
「今僕が“好き”って言ったら……Aどうする?」
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