GENEと恋うた２～SOUND OF LOVE～ (ページ5)

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「玲於来てたんだ」

俺の予想は的中。

亜嵐くんがすぐ俺に気づいて、隣に腰掛ける。

亜「あれ？機嫌悪いの？」

玲「別に…」

亜「何これ？」

一瞬曇った表情を亜嵐くんは見逃さなかったけど、すぐに俺の前の料理に興味が向く。

玲「新メニューだって」

亜「あっ、うま」

一口つまんで、こぼれ出た軽い一言。

なのに
さっきよりも可愛い笑顔で、Aさんは微笑んで…

ほら、もう俺が褒めた事なんて忘れてる。

亜嵐くんは一瞬で俺を超えていく。

玲「これ、俺のだから」

亜嵐くんから皿ごと取り上げて、残りを自分の腹に流し込む。

何だよ、って、2人して笑って見てるけど

独り占めしたいのは、料理なんかじゃないのに…。

亜「こないだの奴どうだった？」

『こないだ？』

亜「デート誘われてたじゃん」

玲「何？」

亜嵐くんはオーダーした後
今日はそれを聞く為に来たかのように、Aさんに問いかける。

こないだ、お店で一緒になったお客さんがAさんをご飯に誘っていたらしく…

色々察した亜嵐くんは、気を遣ってすぐ帰ったらしい。

って、何だよそれ。

すぐに嫉妬の炎が湧き上がる。

『あー、酔っ払ってたし、冗談でしょ』

亜「いや、あれは本気だね」

『もういいじゃん、その話』

Aさんにとっては、亜嵐くんからそんな風に言われる事の方が傷つくみたいで

戸惑いが瞳に見える。

そこには、亜嵐くんしか映ってない。

燃え上がった嫉妬の炎は、すぐに亜嵐くんに向かう。

俺も…ここにいるよ？

玲「A、お代わりちょうだい」

2人の間を割るように
どんっと、空になったグラスを前に出す。

亜「あれ、いつのまに呼び捨て？」

玲「さあ、大分前から？」

うそ、今初めて呼び捨てにした。

だから内心ドキドキしてる。

心の中では何度も練習してたけど、勢いで初めて言ってみた。

呼び方変えたって、亜嵐くんと同じになれる訳ないのに。

『あの、一応私年上だよ？』

玲「そうだっけ？」

『そうだよ、玲於』

Aさんからも初めて呼び捨てにされて、きゅっと胸が掴まれる。

結構呼び捨てにされる事は多いのに

Aさんから言われると

自分の名前が特別な言葉になったみたいで…。

玲「“くん”つけてよ」

『何でよ』

玲「俺のが偉いから」

むうって何か言いたげに頬を膨らませて、Aさんが空のグラスをさげていく。