GENEと恋うた２～SOUND OF LOVE～ (ページ4)

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Aささみの照り焼き

飲み会帰り。

携帯に届いたメッセージ。

携帯に表示された名前に、胸が高鳴る。

メニュー名と料理の写真。

新しいレシピが出来たから食べに来てって暗黙のメッセージ。

最初は外食ばかりの俺を心配して、店でご飯を作ってくれてたのが

いつからか、新メニューの味見係になってて。

距離を置こう…なんて数日前に決心したはずが

連絡がくると嬉しくて、断る選択肢も思い浮かばなくて

仕方ねーな、なんて心で呟きながら

アルコールで少しふわふわしている足は、真っ直ぐにAさんの店に向かっていた。

.

『早速来てくれたんだ』

「近くで飲んでたし…」

『ご飯食べてないの？』

「食べたけど…お腹空いたー」

どかっと、カウンターの俺の指定席に座る。

『ふふ、分かった』

新メニューねって

嬉しそうに、お店の奥に向かうAさんの背中を見ながら

ここに来るの我慢してた分、会えたら余計嬉しいとか…

自分の気持ちの大きさに気づいただけじゃん。

無駄な努力に、ため息がもれる。

．

『どう？』

「んー？」

出された料理を口に運んで、顔をしかめる。

『え、不味い？』

不安そうなAさんの目を見ながら、コップの水を口に含む。

ドキドキしながら待つAさんと見つめ合って、違う意味でドキドキしたり。

このまま時が止まれば…なんて微かな願いを流すように
ゆっくりとコップを置いて「美味い」と呟いた。

『ほんと？』

「こんなの家で食べれるなら、毎日早く帰るのに」

『何それ』

笑ってるけど、本気なんだけどな。

小さくジャブ打ってるつもりなのに

かすりもしない、俺の想い。

Aさんの料理はどれも美味しい。

味付けも俺好みだし。

毎日食べたいし

毎日…

会いたい…

なんて…

さすがにそれは言えなくて、言葉を飲み込む。

『玲於くんはいつも美味しそうに食べてくれるね』

「マジ美味いし」

贔屓目なしで、本当に美味い。

『ふふ、だから好き』

頬づえついて微笑んで見つめられて…

恋でも愛でもない。

特別な意味のない

ー“好き”

分かってるのに…

緩む頬を隠すように勢いよく食べ物を口に運ぶ。

静かな店内に聞こえてしまいそうなぐらいドキドキしてるの…気付いてる？

『いらっしゃいませー』

店の扉の開く音がして、一瞬でAさんの表情が変わる。

振り向かなくても誰が来たか分かってしまう。