化物への愛情表現。 ページ42
任務帰りに、アキラと再会した数日後。
沈む夕陽を横目に目を覚まし、化物の姿で戦地に赴き、夜明けと供に拠点に戻り、少し書類仕事を片付けてから、太陽が私の真上に来た頃に眠りに着く。
そんな日常を、あの日以降も、変わる事なく続けていた。
でも、あの日から変わった事が、一つだけある。
「A」
芥川さん、否・・・龍之介さんが、任務帰りの私の前に、何時もより少しだけ上機嫌な顔で立っている。
『只今帰還しました、龍之介さん』
私は取り繕いの無い笑顔で、彼に答えた。龍之介さんが鋭い目で私を見る。
「・・・無傷か?」
『見ての通り』
私が、にこりと笑ってみせると、芥川さんは「善く遣った」と云って、
私の頭をそっと撫でた。
龍之介さんの表情が、少しだけ柔らかい。そんな彼を見て、私の表情もつい綻ぶ。
・・・そう。あの日から変わった事とは、私と彼が、同僚から恋人になった事だ。
龍之介さんのあの日の告白に、私はこう答えた。
『私も、貴方の隣が好きです。一緒に居たいと思っています』
彼が満足そうに笑う一瞬前に、私は『だけど、』と口にした。
『1つ教えて下さい。・・・貴方は、化物である私を嫌わないで下さりますか?』
ずっと大嫌いだった。私を異形の化物にする異能。役者をする上で足枷になった呪い。
其の異能で、初めて人の役に立てた場所が、ポートマフィアだった。芥川さんの隣だった。
だけど、彼の隣に居たいと思っているのは、私だけかも知れない。彼もスターズの人達と同じ様に、化物としての私の事を忌み嫌っているかも知れない。
彼が答える迄、私は疑いもなくそう思っていた。
「・・・何を今更、其の様な事を云うのだ」
苦々しく顔をしかめて。
「僕は元より、化物である貴様も含め、貴様が好きだと云ったのだ」
其の科白に嘘が無い事は、私が誰より判っていた。彼が、優しい嘘を選ぶ筈が無いのだ。
だから私は、迷いなく彼の手を取った。私は彼を、龍之介さんを、幸せにすると誓った。
「A」
あの日の事を思い出していると、名前を呼ばれた。私は緩やかに顔を上げる。
「・・・死ぬなよ」
彼はそう云って、私の頭をポンポンと叩いた。
知っている。命が吹けば飛ぶ様な儚さの黒社会で、相手に死ぬなと伝えるのは、最高の愛情表現。
だから私は、私自身の笑顔で答える。
『はい』
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世河経(プロフ) - 文ストもアクタージュも大好きです!クロスオーバーしたかったんですが、「どうする……?」と思考停止状態で、「ふおおおそう来たか!」って驚愕しました!!!こんなに面白いのに何で星が赤くない……?(煩くてすみません。あと連コメごめんなさい) (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 天香さん多分文スト滅茶苦茶読み込んでいらっしゃいますよね?!要所要所に小説で見たような表現が……。すごいです!何課、本当に。、私が目指してるやつで。。。尊敬してます!! (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - ちづさん» は、発狂ですか!?御馳走様です!(錯乱)アクタージュと文ストのクロスオーバー全然無いですよね・・・僕もまだまだ未熟なので、お見苦しい点は多々あると思いますが、貴重なクロスオーバー作家(オイ)として頑張ります(笑) コメントありがとうございます! (2020年4月17日 22時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ - アクタージュも文ストもめちゃくちゃ好きで好きで!!!!!!この作品を見つけた時発狂しちゃいました笑応援してます!! (2020年4月17日 10時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - 蟹江さん» え・・・(歓喜の余り思考停止)こんな所まで来て下さるとは・・・!貴方のお言葉で完結まで突っ走る気力が湧いて来ました!!アクタージュはガチで神作なので是非ご一読をお勧めします!!貴方の為に更新頑張ります!!! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2020年3月12日 13時