変化と再会。 ページ34
今迄、任務後に声を掛けられたことは無い。
女優時代とは、髪型を変えたりカラコンを入れたりして容姿が違うからかもしれないし、芥川さんが下さった帽子が功を奏しているのかもしれない。
けれど何より、雰囲気が変わったと云うのがあるのだろう。黒社会に肩迄浸かった私を見て、嘗てのスター女優を思い出す人は最早いない。
私は人の居ない町外れの裏通りを黙って歩いた。
私の足音だけがビルの外壁にこだましていた。夜明けの冷たい風が、私の短い髪を靡かせた。
私一人きりしか居ない様な静かな世界に、然しもう1つ控えめな足音が介入した。如何やら其れは、裏通りの外から聞こえている様だった。
やがて、裏通りは終着点を迎えた。其れと同時に、もう1つの足音の主が目に入る。
____「彼」は私の正面に立って、足音を止めた。
____訳が判らなかった。
なぜ、なぜ君がここに。
そう云おうとしても、耳鳴りの様な音と心臓の音が脳をぐちゃぐちゃに掻き回して、言葉は出て来ようとしない。
段々と顔から血の気が引いて行く。視界がチカチカと緑色に明滅する。
初めて芥川さん達と会った時も、初任務で殺されかけた時も、ここまでの恐怖を感じる事はなかった。
____ 落ち着け。未だ、「彼」が私に気づいているとは云い切れない。私は容姿も変えたし、雰囲気だって昔とはまるで違う。だから大丈夫だ。
必死で自分に言い聞かせて、私は其の場を立ち去ろうとする。なるべく「彼」を見ない様にして。
けれど「彼」は、そんな私を其の場に縫い止める様に、口を開いた。
「____Aさん、僕だよ」
足が止まる。呼吸が上手く出来ない。
マスクに伊達眼鏡。鮮やかな金髪。眼鏡越しでも、澄みきった翡翠色の瞳。
私の大切な記憶。もう戻らない存在。
『・・・・・・何でよ、アキラ』
漸く出た声は、情けなく掠れて、殆ど声にならなかった。
「彼」____星アキラが、何処か虚ろな表情で私を見ていた。
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世河経(プロフ) - 文ストもアクタージュも大好きです!クロスオーバーしたかったんですが、「どうする……?」と思考停止状態で、「ふおおおそう来たか!」って驚愕しました!!!こんなに面白いのに何で星が赤くない……?(煩くてすみません。あと連コメごめんなさい) (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 天香さん多分文スト滅茶苦茶読み込んでいらっしゃいますよね?!要所要所に小説で見たような表現が……。すごいです!何課、本当に。、私が目指してるやつで。。。尊敬してます!! (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - ちづさん» は、発狂ですか!?御馳走様です!(錯乱)アクタージュと文ストのクロスオーバー全然無いですよね・・・僕もまだまだ未熟なので、お見苦しい点は多々あると思いますが、貴重なクロスオーバー作家(オイ)として頑張ります(笑) コメントありがとうございます! (2020年4月17日 22時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ - アクタージュも文ストもめちゃくちゃ好きで好きで!!!!!!この作品を見つけた時発狂しちゃいました笑応援してます!! (2020年4月17日 10時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - 蟹江さん» え・・・(歓喜の余り思考停止)こんな所まで来て下さるとは・・・!貴方のお言葉で完結まで突っ走る気力が湧いて来ました!!アクタージュはガチで神作なので是非ご一読をお勧めします!!貴方の為に更新頑張ります!!! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2020年3月12日 13時