【文スト】其の女優の行く先は【アクタージュ】

怪物の戦闘。 ページ33

戦地には直ぐに辿り着いた。



私は、思った以上の敵の多さに、一瞬顔をしかめた。幾ら私と芥川さんが居ようとも、全員を制圧するとなると、相当骨の折れる作業に成るだろう。



然し、そんな私の懸念等関係無しに、敵は私達に気付く。



「おい、“禍狗”と“化物”じゃないか・・・」



男達が私達に騒めく。そこそこ名の通った異能者である私達の突然の登場に、奴等は動揺を隠せずに居る様だった。



「行くぞ、A」



其れに対して、芥川さんは実に冷静に、此方を振り向いた。其の動作のついでの様に、彼の異能が閃き十数人を一度に薙ぎ払う。



『はい』



私も呟く様に返事をして、襤褸を纏った男達に近寄る。



「や、やめろ、来るな、こっ、此の化物がっ！」



男達のうちの1人が、耳障りな大声で喚いた。銃器をかざし、私に向け発砲しようとする。



・・・私にしてみれば、銃なんて只の玩具に等しいのに。



私は手を伸ばす。男が掲げる銃に手が触れて、其れで銃は儚く砕け散った。



「や、やめろぉぉぉぉぉ！！」



へたりこんで情けない叫び声を上げた男達に、私は息を吹き掛ける。



其れだけで、男達の体は業火に包まれた。此の力は実に楽だ。何の証拠も残さず、綺麗さっぱりと敵を葬る。



業火の後に残った灰を、指で払って吹き飛ばした。十数人の男達の命の痕跡を消すのに要した時間は、僅かに数秒。私は小さく顔を歪めた。



『・・・化物、ね』



一理ある。何処に行っても浴びせられる其の罵倒は、既に耳慣れた物であり真実でもあるけど、云われる度に、脆い心は薄く抉られる。



其の事実を誤魔化す様に、私は再び戦闘へと意識を戻した。



***



戦闘が終わったのは夜明け前だった。



時間にして数時間に及んだ戦闘は、敵の技量というより数による長期戦だったけれど、私達は未だ疲れきっては居なかった。



任務前に仮眠を取ったからかもしれない。或いは・・・



「A、僕は部下の帰還用の車を待って居る。貴様は其の姿が元に戻り次第、拠点に帰って善いぞ」



芥川さんが私に呼び掛けた。其の表情は、任務終了の安心からか少し柔らかくなっている。



『了解です』



軽く頷いた私の手が、徐々に人間の物に戻って行く。如何やらもう夜が明けたらしい。



私は芥川さんに1つ会釈をして、夜明けの街に足を踏み出した。

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