お喋りと気遣い。 ページ31
・・・此の状況、一体何なんだ。
寝台に座った私は、芥川さんにひたすらに頭を撫でられている。
「ふむ、存外柔らかいのだな。もっと硬い物かと」
何故か好奇心を剥き出した表情で、華奢な腕を目一杯に伸ばし、芥川さんはひたすらに私の頭を撫でる。
『・・・そりゃまぁ、実体は無い様な物ですから』
「不思議な異能だな」
しきりに頷きながら、彼はぽんぽんと私の頭を撫でている。
『・・・若しかして、酔ってますか?』
普段の彼はもっと不機嫌で静かで、感情の起伏も無い。此のはしゃぎ方は、よもや酒が入っているからなのではと思わず勘繰って仕舞った。
「失礼な。酒等飲まぬ。如何しても飲まなければならぬ時以外はな」
私の新歓の時のあれは、如何しても飲まなければいけない時だったのだろうか・・・
『其れって例えば何時ですか?』
「酔った中原さんが絡んで来て、素面で相手をするのが限界に成ったら飲む」
『大分限定的ですね・・・』
成る程、そういえば新歓の時も、芥川さんが飲み始めたのは、中原さんがすっかり出来上がってからだった。
『矢張り彼が組織内で一番酒癖が悪いんですかね・・・』
「恐らく断トツだ」
芥川さんの目は大分据わっている。・・・結構溜まってるなぁ、でも。
『芥川さんも、酔ったら結構に凄い方かと・・・』
「何だと!?僕は酒で失敗した事等・・・精々、酒を飲んだ夜の翌朝、如何遣って家に帰ったのか判らなくなるだけだ!」
『其れバッチリ失敗してますが・・・』
というか私、酔った芥川さんに滅茶苦茶絡まれた思い出が有るんですが・・・本人的に黒歴史でしょうから態々掘り返しませんが・・・
私が少し呆れて芥川さんを見ていると、彼は少し黙ってから、云った。
「貴様、何だか其の姿の時の方が人間らしいな」
『・・・はい?』
何ですか其れ、遠回しな暴言?
複雑な気持ちに成りかけると、芥川さんが云った。
「最近の貴様は、腕は上がったが・・・何処か機械の様だった。感情を表す余裕が無いのなら無理にそうしろとは云わぬが、如何やらそうでも無い様だ」
芥川さんは、少し皮肉っぽく此方に目配せした。
「マフィアだからと云って、無闇に感情を殺さずとも善いぞ」
彼の細やかな助言と気遣いは、私の頭を撫でる手から、温もりと供に伝わる様だった。
『・・・そうします』
素直に返事をした私に、芥川さんは満足そうに微笑した。
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世河経(プロフ) - 文ストもアクタージュも大好きです!クロスオーバーしたかったんですが、「どうする……?」と思考停止状態で、「ふおおおそう来たか!」って驚愕しました!!!こんなに面白いのに何で星が赤くない……?(煩くてすみません。あと連コメごめんなさい) (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 天香さん多分文スト滅茶苦茶読み込んでいらっしゃいますよね?!要所要所に小説で見たような表現が……。すごいです!何課、本当に。、私が目指してるやつで。。。尊敬してます!! (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - ちづさん» は、発狂ですか!?御馳走様です!(錯乱)アクタージュと文ストのクロスオーバー全然無いですよね・・・僕もまだまだ未熟なので、お見苦しい点は多々あると思いますが、貴重なクロスオーバー作家(オイ)として頑張ります(笑) コメントありがとうございます! (2020年4月17日 22時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ - アクタージュも文ストもめちゃくちゃ好きで好きで!!!!!!この作品を見つけた時発狂しちゃいました笑応援してます!! (2020年4月17日 10時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - 蟹江さん» え・・・(歓喜の余り思考停止)こんな所まで来て下さるとは・・・!貴方のお言葉で完結まで突っ走る気力が湧いて来ました!!アクタージュはガチで神作なので是非ご一読をお勧めします!!貴方の為に更新頑張ります!!! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2020年3月12日 13時