援護と決断。 ページ28
Aside
目の下が腫れぼったく熱い。
如何やら泣き疲れて眠って仕舞ったらしく、時計の長針が2周程廻っていた。
『・・・泣き疲れて寝るとか、子供か』
ぽそりと呟いた。如何やら私は、自分で思っていたより余程、弱っていたみたいだ。
細く長く、溜め息を吐いた。
実戦では足手まといになって、唯一の取り柄である演技すら出来ずに恩人に気を遣わせる自分が、ただただ遣る瀬なくて仕方ない。
憂鬱な気分で寝台のシーツに着いた染みを眺めていると、控えめなノックの音がした。
『・・・どうぞ、お入り下さい』
掠れた声で云うと、扉が静かに開いた。
『・・・銀さん』
黒蜥蜴の、中性的な雰囲気の暗殺者だ。でもこうして見ると、睫毛も長く肌も綺麗で、女性らしさがはっきり分かる。
『今日の任務、迷惑を掛けて仕舞い済みませんでした』
出来るだけ柔らかい表情で、控えめに笑む。相手を安心させる為の表情。
けれど銀さんは、何処か不安そうに眉を下げた。
「・・・兄が、貴女を心配していました」
其の言葉に、呼吸が止まった。・・・そうだ、彼女の兄は芥川さんだ。
『・・・其れは、申し訳無いですね』
動揺は微笑で隠して、私は小さく首を傾げた。
「・・・私も、貴女が心配です」
銀さんは可愛らしい声で、たどたどしく云った。
「貴女は何処か、兄に似ている」
微かに唇を綻ばせてみせた。
『私が、芥川さんと?・・・真逆』
私の様な役立たずと、彼の様な強い人を一緒にする等、とてもでは無いが有り得ない。
「いえ、兄も貴女も、人に弱みを見せる事を嫌う。棄てられる事を恐れるあまりに、弱くいる事が出来ずにいる」
銀さんは少し目を伏せて、恥ずかしそうに云った。
「貴女は今まで、強くある事を強いられていたのかも知れないけれど・・・今は、私達が援護出来ます。弱くても、大丈夫です」
そして、彼女は優しく笑った。
『有難う御座います、銀さん』
辛うじて語尾が震えずに済んで、ほっとしたけれど、私はまたもや泣きそうになって仕舞った。
彼女の誠実な言葉に、私は、臆病なりにマフィアに尽くそうと決断した。
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世河経(プロフ) - 文ストもアクタージュも大好きです!クロスオーバーしたかったんですが、「どうする……?」と思考停止状態で、「ふおおおそう来たか!」って驚愕しました!!!こんなに面白いのに何で星が赤くない……?(煩くてすみません。あと連コメごめんなさい) (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 天香さん多分文スト滅茶苦茶読み込んでいらっしゃいますよね?!要所要所に小説で見たような表現が……。すごいです!何課、本当に。、私が目指してるやつで。。。尊敬してます!! (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - ちづさん» は、発狂ですか!?御馳走様です!(錯乱)アクタージュと文ストのクロスオーバー全然無いですよね・・・僕もまだまだ未熟なので、お見苦しい点は多々あると思いますが、貴重なクロスオーバー作家(オイ)として頑張ります(笑) コメントありがとうございます! (2020年4月17日 22時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ - アクタージュも文ストもめちゃくちゃ好きで好きで!!!!!!この作品を見つけた時発狂しちゃいました笑応援してます!! (2020年4月17日 10時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - 蟹江さん» え・・・(歓喜の余り思考停止)こんな所まで来て下さるとは・・・!貴方のお言葉で完結まで突っ走る気力が湧いて来ました!!アクタージュはガチで神作なので是非ご一読をお勧めします!!貴方の為に更新頑張ります!!! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2020年3月12日 13時