【文スト】其の女優の行く先は【アクタージュ】

薄暮の元女優。 ページ2

皮肉な程美しい夕陽が、海に沈み掛けて居た。



私は黙々と横浜の街を歩く。サングラスを掛け、マスクをして、厳重に変装をして。



夜になる前に家に帰らなければならない。そうしないと、もっと大きな騒ぎに成って仕舞う。



泣きそうになるのを必死で堪えた。私は役者だから、自分の気持ちに演技して誤魔化した。



万が一でも声を掛けられてはいけないと、私は人通りの少ない路地を選んで曲がった。



・・・が。其れが、間違いだった。




向かいから、蜂蜜色の髪を纏めた女性と、黒髪に黒外套の青年が歩いて来る。



2人とも私と同年代で、かなり整った容姿だ。



綺麗な人達だな、とちらりと目を向けた。たった其れだけだった。



けれど、其れだけで、蜂蜜色の髪の女性は『気付いた』らしかった。



「・・・ッ！あの、もしかして住野Aさんですか！?」



彼女は目を耀かせて、私に詰め寄って来た。



『・・・・・・え?』



・・・まずい。此れは、まずい。



「や、矢ッ張り本人だ！凄い、生のAちゃん顔小さい、脚細い可愛い・・・！あっあの、サイン御願いしてもっ！?」




彼女は凄い剣幕で、鞄から出した手帳とペンを私に差し出した。




『・・・あの、えっと』



如何返事したものか困っていると、隣で沈黙を決め込んで居た青年が、スパーン！と華麗に女性の頭を叩いた。



「痛いッ！」



「煩いぞ樋口。僕等は仕事に向かう中途だろう。其の女が誰かは知らぬが、無闇と浮かれて僕の足を止めるな」



青年の助け船に、そっと安堵の溜め息を着いた。



其れと同時に、少し疑問に思う。



何故彼女は＿＿＿＿樋口さんと呼ばれた此の女性は、




スキャンダル女優(・・・・・・・・)のサイン等欲しがるのだろう?

女優への糾弾。→←彼女の資料。

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