9. ページ9
.
「めーいっ」
「あーカルロス」
「期待してるぜー今日のピッチングも」と頭を小突いてやると、
「任せなさい」とにやーっと笑われた。
何様だという気持ちで彼を苦笑いで見つめる。
「カルロス!そいつにもう話しかけるな!
アップなのに飛ばしすぎてるから煽んじゃねぇ!」
「あ、すいません原田さん」
.
たしかに。
さっきからアップとは思えないスピードで淡々と投げている鳴。
まあ、あれだ。
愛しの中野っちが見てるから気合が違うんだろうけど。
.
「ねぇカルロス」
「あー?」
「さっきからAちゃん、全然こっち見てないよねー」
「………」
鳴の視線の先を見ると、
中野っちは、陽子ちゃんと話をしている。
鳴の声は、明らかに嫉妬しているそれで。
こいつは好きな子の女友達にも嫉妬するのかと、ちょっと吹き出してしまって、鳴に睨まれた。
「……なに笑ってんの」
「…あ、いや……陽子ちゃんにも嫉妬すんだなーと思って」
「別に嫉妬じゃないけど、
よしこちゃんがAちゃんに抱きついてた時も、はぁ?とは思ったね」
「陽子ちゃんな。
ていうかそれを嫉妬って言うんだよ」
「まあ、嫉妬でもなんでもいいけどさぁ
…Aちゃんは…」
.
鳴が言いながら投球フォームに入る。
さっきよりまた一段と増した手の振りのスピード。
どんだけ飛ばすんだ。
.
「俺だけ見てればいいんだよ」
.
ズパーンっ
いい音が響いて、会場がどよめく。
とんだ俺様男だな。
なんて思いつつ、中野っちの方を見ると、
陽子ちゃんの方からこっちに向き直って、
ぽかーんと口を開けて見ている。
「…」
「にやけてんじゃねぇよ」
「あーはやくマウンドで投げたい!」
こっちに釘付けの中野っちを見て、
嬉しそうに口元をグローブで隠す鳴。
無邪気なのか俺様なのかよくわからないけど、こいつは中野っちに相当重症らしい。
「鳴!いい加減、加減して投げろ!!」
原田さんが駆け足でこっちに来て、
ニヤニヤしている鳴をごつんと殴った。
「うるさいなーわかってるよ」
「お前そんないつも以上に自己中心的にやってると、試合中マウンド降ろされるぞ」
「げっ。監督睨んでる」
「さっきからずっと睨んでるよ」
.
645人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ