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「Aから見に行きたいって言うなんて、どんな風の吹き回し?」
「…………ちょっとね」
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日曜日。
青道高校までやってきた。
陽子について来てと頼むと、大喜びで了承されたので、二人で青道の広いグラウンドを眺めている。
「なんか、思ったより応援の人いないから目立つねー」
「OBの人ばっかりだね」
見渡すと、ほとんど20代30代らしきおじさんたちばかり。
女子高生はわたしたちぐらいしかいなくて、なんか肩身が狭い。
「あ…成宮くんだ」
「え?」
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「Aちゃん!!!」
「……っ!」
ユニフォーム姿の成宮が、こっちに向かってすごい速さで走ってきて、
もはや突進だろというスピードでぶつかるように抱きついてくる。
「ほんとに来てくれるとは思わなかったよー!
今日は俺の勇姿をしっかり目に焼き付けて…」
「いいから離れ…」
「照れてる?」
「近づくなって言ったでしょ!」
「ひっどー。相変わらず冷たいなー」
周りのOBの方達のニヤニヤした目線が痛くて、
文句を言っている成宮を私の体から引っぺがす。
「俺、修北との試合で投げるからさ。応援しててね!」
「……」
「俺のピッチング見たらそんな無愛想な反応できなくなると思うよー」
自分で言うんかいと思いつつ、無視を決め込んでいる私に焦ったのか、陽子が必死に成宮を応援している。
「がんばって!」
「ゆうこちゃんはカルロスを応援してあげなよ」
「………陽子です」
「とにかく、最後まで見てってね!」
「鳴ー!行くぞー!」
「はいはーい!俺行かないと…」
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成宮は、
彼を呼ぶ声に適当に返事をして、わたしにずいっとかおをよせる。
「俺が一番かっこいいとは思うけど一也とかもいるからね」と言って耳元に口を寄せる。
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「………よそ見すんなよ」
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低い声が耳を掠める。
予想以上の近さに不覚にもどくんと心臓が大きく動いて、
思わず耳を抑えてバッと成宮から離れると、にやーっと笑われる。
「じゃーねAちゃーん!」
嵐のように去って行く成宮を無言で見送ると、陽子が私の顔を覗き込む。
「A、顔赤いよー?」
「誰だってあんなに近づかれたら顔くらい赤くなるわ!!!からかわないで!」
「ごめんって〜」
ニヤニヤしている陽子の肩を殴ると、ヘラヘラと笑い返された。
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