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成宮は我が物顔で、私を廊下まで引きずり出す。


「……わたしはない」

「……………じゃあ無理やり連れて行きまーす」

「ちょっ自分で歩ける!!」


頑なに動こうとしない私に、愛想を尽かしたのか、成宮に担ぎ上げられる。そこは、さすが野球部というか、ちんちくりんに見えて筋肉はあるらしい。

みんなの好奇の目線が痛い。





ひと気のない廊下までつれてこられた。


「なに、話って」

「今度、俺たち青道高校に行って、試合するんだよね」

「それで?」

「Aちゃんに…」

「お断りします」

「まだ言ってないんだけど!」

「見に来てって言うんでしょ」

「分かってるなら話ははやい!」

「行かない」

「………ふーん」


「ま、Aちゃんがそれでいいならいいけど…」と、無表情で呟いたと思ったら、

大きなエナメルバッグから緑の冊子を取り出した。

「…え」と言う私に反応して、

成宮は性格の悪い笑みを浮かべる。


「そ、それ!私の単語帳!」

「昨日の放課後、俺が持ったままだったんだよね」
「返して」

「………見に来てくれたらかえす」

「脅してんの」

「人聞き悪いなぁ。物々交換じゃん」

「…わかった。見に行けばいいんだよね」

「来週末だからさ!忘れないでよ今の言葉!」


今度は一変、
カバンの中にわたしの単語帳をしまいながら、
嬉しそうにニコニコ笑っている。


多分、
この顔を世の女の子たちが見たらイチコロなんだろうな。

なんて思いながら彼の顔を凝視する。



「Aちゃん見過ぎ」

「…ごめん」
「……」



素直にあやまったことに驚いたのかなんなのか、
一瞬目を丸くすると、また嬉しそうに笑う。


「惚れ直した?」

「…ねえ」

「…無視?」

「私が見に行って、成宮にいいことがあるの?」

「……あ、うんまあ…」


「いいことっていうか…」と呟きながら、ぽりぽり顔をかく成宮。

小さく唸り声をあげながら、少しずつ成宮の頬が赤くなる。首を傾げる私を見る目も泳いでいる。

キャッチャーの先輩の声が聞こえてくる。

「鳴ー!」

「あ、雅さん」

「部活始まるからさっさとこい!」

「わかってるよぉー。じゃ、Aちゃんまた今度…」


走り去ろうとしたところで、「あ」と踵を返してこちらへくると、

ぐいと私の手首引っ張って引き寄せると、

ほっぺにちゅと口付ける。


.


「じゃーね」


.


(ありえないありえないありえない!)
「Aー。何ほっぺこすってんの」


.

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設定タグ:ダイヤのA , 成宮鳴   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:ちか | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2014年2月14日 18時

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