47. ページ47
陽子
.
ぺこりと頭を下げた私に成宮くんはぷっとふきだして、「当たり前じゃん」とわらった。
「Aちゃんが俺のこと好きになってくれたら、絶対世界で一番幸せにするし」
「……」
「Aちゃんは、俺の中でも大事な人だよ」
バシッと音を立ててパックをたたむ。
見たことないような顔で楽しそうに笑う成宮くんに私は「そうだね」と笑ってもう一度お箸を持った。
「成宮くんは凄いよね。好きな人に自分の気持ちを一直線に伝えて…」
「え、俺凄い?え、凄い?」
「凄いよ。私にはできない」
「凄い」と言えばホクホクと嬉しそうな顔になる成宮くんに素直に返せば、「陽子ちゃんはさー」と私をビシッと指差す。
「あーもうこの思い止めらんない!溢れちゃう!ってなる時ない?」
「……ある」
裏声で可愛らしく言う成宮くんに静かに頷くと、「それ!」とまた指をさした。
「その時に、必死に胸に収めるか、伝えちゃうかの違いだよ」
「…それが出来るのは成宮くんぐらいだよ」
「……俺だってこれでも勇気振り絞ってんだよ?これでも1年近くAちゃんのこと見てるだけだったんだから」
「……そうなの?」
「そう!陽子ちゃんとAちゃんが練習見に来た時に、これを逃してなるものか、逃したらおしまいだと思って行ったよね」
口をむんっと噤んでガッツポーズをする成宮くんに私は静かに頷く。
「自分の好きな人が自分のこと好きになるって奇跡みたいなことじゃん?」
「うん」
「だから、そんな奇跡を起こせる可能性が1パーでもあるなら、告白する?しない?じゃなくて、しなきゃ損ってぐらいの気持ちで当たってかないとね」
「ま、最初はめちゃめちゃ拒否されたけどねー」と笑う成宮くんに、私はお弁当箱をぎゅうっと掴む。
私がカルロスくんを好きになったのは半年くらい前、放課後の練習を見て一目惚れだ。
そこから話しかけられずにこっそり遠くから追いかけてて、今回Aと成宮くんのことがあって奇跡みたいに一緒に居られることが増えた。
成宮くんの言葉が胸にジンときて、私は「成宮くん…」とつぶやいた。
「放課後、カルロスくんを中庭に呼んでくれる?」
.
645人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ