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「自分で食べてよ!!!」
「俺は病人だよ!?素直に甘えたらって言ったのAちゃんじゃん!」
「自分でできることは自分でやりなよ!」
「でーきーまーせーん」
「……………はぁ」
胸を張って言ってのける成宮に、私はため息をつきながらフォークをりんごに突き刺すとずいっと乱暴に突き出した。
「いただきまーす!」と嬉しそうに笑ってりんごを頬張る。
「……にしてもさー、Aちゃん意外と料理は苦手なんだね」
「……………悪い?」
「いや、別に?できないことがあったほうがかわいいよ」
「…」
またそうやって………
可愛いとかなんとか、言われ慣れてない私に直球で言葉をぶつけてくる成宮に、ついつい頰が火照る。
好意をストレートにぶつけられるのは、初めてでどうしたらいいのかわからなくなるからやめてほしい。
「まあ、俺はAちゃんが完璧なんて思ってないけど。ちゃんと頑張っていい成績とってるのも知ってるし、運動もできないのだって、知ってるし…」
「………」
「私服がダサいのも今日知ったし」
「ちょっと!」
ムッとしてキレる私に「冗談だって」と笑う成宮。
肩を叩こうと軽く上げた私の手首を掴むと、
「俺はAちゃんのこと、Aちゃんが思ってる以上に好きだよ。
もっとAちゃんのこと知りたいと思ってる」
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覗き込んで、
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上目遣いで、
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真面目な顔で…
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目線に耐えかねて、上気する顔を隠しながら「離してよ…」とつぶやいた。
「やだ」
「からかわないでってば…」
「からかってない。言ったでしょ。Aちゃんの気持ちちゃんと聞きたいって
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どう思ってんの、俺のこと」
掴んだままの手首にぎゅっと力がこもるのがわかる。
いつもみたいに叩いて、
逃げて、
なんて、
この場でできるはずもなくて、私は目線だけ泳がせる。
「まだ、あのときみたいに、俺のこと嫌い?」
成宮の言葉に唇を噛む。
『別にあなたのこと好きじゃないので』
あのとき私は、成宮の気持ちも言葉の意味も、まったく真剣に考えてなくて、
ただの悪い冗談だと思って、
ありえないって突き放してた。
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今は、
どうなんだろう。
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成宮のことを好きじゃないのか、嫌いか、
と聞かれたら、素直に悩む。
いつも突き放して「やめて」って言ってるのは、
ただ私が、意地を張ってるだけなんじゃないのかな。
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