【◇】私と成宮 (ページ40)

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「ちょ、ちょっとカルロスくんふざけてるの？」

「別にふざけてない」

カルロスくんは私の携帯を閉じて渡すと、自分の部屋へ向かって歩き出す。私はその後を追って小走りでついていく。

私の携帯に奪い取るように出たカルロスくんは、受話器の向こうの白河くんらしい人に「俺の代わりに陽子ちゃんを楽しませてあげて」と告げた。

ふざけてるのか。

「だって、白河くんと陽子はあんまりいい関係性じゃ……」

「いーじゃん面白いし」

「面白くない！陽子の気持ち分かっといてそれはないって……」

「陽子ちゃんの気持ちって何？」

必死に言う私に、きょとんと答えるカルロスくん。

「………へ？」

「え、今回のダブルデートって中野っちと鳴をくっつけるためのものだろ？俺と陽子ちゃんは関係ないっしょ」

いや、ふざけてるのか。

もう一回言いたくなるくらい、あっさりと言ってのけるカルロスくんに、私は思わず頭を抱える。

ふざけてるんじゃない。この人、天然なのか。

あれだけ好き好きオーラを出している陽子に、

他人に興味のない成宮ですら気がついている陽子の気持ちに、

当の本人であるカルロスくんは全くと言っていいほど気づいていない。

「これを機に陽子ちゃんと白河がくっついたら面白くない？白河も女の子に興味持った方がいいっていっつも言ってるんだけどさぁ……中野っち聞いてる？」

「………うん」

なんだかすごく陽子が気の毒になって、人の気も知らずに楽しそうに話しているカルロスくんの話は右から左に流れていった。

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「あ、Aちゃんおかえりー」

「………ねぇ」

布団から顔をのぞかせて私に向かって笑う成宮。
私は彼のベッドの隣にストンと座ると、ため息をつきながら言う。

「カルロスくんって天然なの」
「………え？」

かくかくしかじかでと話せば、枕に顔を埋めてぷるぷる震えている成宮。
私は彼を睨みながら「笑うな」とつぶやく。

「陽子ちゃん………かわいそ…………ぶっ」

「かわいそうどころじゃないよ…」

「……あははっ…ごめんごめん…………カルロス最悪だね…」

まだ笑いが収まらないらしい成宮は、ごろんと私の方を向いて涙を拭う。

「でもさぁー…Aちゃんだってタチ悪くない？」
「は？」

「カルロスは天然だけどさ、
Aちゃんは俺の気持ちわかってんのに相手にしてくれないじゃん」

「…………」

うぐっと黙り込む私に、成宮は「ま、いいや」と笑った。