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「Aちゃん!どう!?どうよこれ!!」
「あー……うん、すごいすごい」
「つめたっ!!」
受けたテストの大半が帰ってきて、
浮かれモードまっしぐらの成宮が私のところに来て自慢するほどでもない点数を見せびらかしてくる。
申し訳ないけど私は今それどころではないので、物理のテストにかじりつくように向かい合っている。
「………物理……75点?」
「カルロスくん、言ったら睨まれるからやめといたほうがいいよ」
「え、75点でだめなの」
「A、物理が一番苦手だから一番力入れてて…」
「へー…」
聞こえてますけど。
と思いつつ、成宮と陽子とカルロスくんの声を右から左に聞き流していると、成宮が私の机の前にしゃがんで無理やり視界に入ってくる。
「ほら!Aちゃん!俺なんて物理30点だよ!」
「………へー…よかったね…」
「ちょっと!俺はAちゃんを励まそうとしてるんだけど!」
ぷりぷり怒る成宮を無視して、私は物理のテストを持って立ち上がる。
「採点に納得いかないから先生のところ行ってくる」と言えば、「悪あがきだねー」とカルロスくんに言われてその通りだと思いつつも彼を睨みながら教室を出た。
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「失礼しました」
用事が済んで職員室を出ると、職員室の壁にもたれてぼーっとしている成宮がいた。
「…なにしてんの」
「Aちゃん待ってたに決まってんじゃん」
「………暇なの?」
「暇じゃない!エース様の忙しーい時間を割いてんの!Aちゃんのために!」
余計なお世話と思いつつ、成宮の隣で職員室の壁にもたれると、ぎょっとした顔で見られる。
「…なに?」
「……………いや、別に」
「急に隣にくると思わないし……」と小さい声で言う成宮をムッとして睨みつつ、
すっと離れようとすれば、ガッと手首を掴まれる。
「Aちゃん、なんか良いことあった?」
「へ?」
「ちょっと嬉しそうに見えるけど」
「……………わかる?」
「わかるよ。
…ずっと見てるもん」
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「…あ、そう……」
眩しい笑顔を向けられて、思わずキュッと胸の奥が疼く。
ずっと見てるからとかさ…なんでそう恥ずかしげもなくそういうことが言えるんだろうか。
熱くなる頬をテスト用紙で隠しつつ、もう一度成宮の隣に立った。
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