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中野良太
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「あ、姉ちゃん」
「今話しかけないでくれる」
俺が部活を終えて家に帰れば、自分の部屋でものすごい勢いで参考書と向かい合っている姉ちゃんがいた。
ちょっと声をかけただけでこの気迫。
なんか悍ましいものを感じる。
でもまあ、何年も弟やってる俺にとってはどうってことないというか、姉ちゃんならなんでも可愛いというか。
そーっと姉ちゃんの部屋に入ってベッドに座ると、頬杖をついてつぶやく。
「……鳴さん」
ぴたりと止まる姉ちゃんの動き。
「その名前を二度と口にしないで」
「え、ちょ、何かあったの」
「なんにもない」
「……は、激しかった？」
「なんにもない！ほんとになんにもないの！」
ものすごい怖い顔で言われて「そ、そうですか」と言うしかなくて、引き下がる。
「姉ちゃん、鳴さんとデートとか言ってたけどどうすんの」
「は……………」
「テストのご褒美」
「あぁ………………良太代わりに行く？」
「いや行かねーよ！」
さっきの勢いはどこに行ったのか、大きくため息をついて俺の方をむく姉ちゃん。
「良太には言う」とぺらぺらと今日あった出来事を話し始める。
「どう思う。私はもう成宮と縁を切ろうと思ってるんだけど」
「……………んー…
.
なんか、姉ちゃんが勉強以外のことでこんなに頭の中いっぱいなのって初めてじゃね？」
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「……………良太、何が言いたいの」
「俺も常々、姉ちゃんは勉強以外の楽しさを知った方がいいと思ってた」
「うん？」
「姉ちゃん、俺は鳴さんと姉ちゃんの関係を全力で応援するよ！」
「は？！」
また厄介なのが増えた…と絶望している姉ちゃんに、「鳴さんとのデートは絶対行くこと！」と言うと、ベッドから立ち上がって出口に向かった。
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