31. ページ31
.
「………」
「…おはよー」
「…っ」
目をさますと、白い天井が見えて、ふっと隣を見ると、制服姿で頬杖をついて唇をとがらせてる成宮がいた。
「ここ…」
「保健室。陽子ちゃんは帰った。俺が運んだ」
「……………ごめん」
「……ちゅーしてくれたら許そっかな」
「……………あほ」
いつもの調子で言ってくる成宮に、私は布団の中に潜りながらぼそっという。
成宮の前で醜態をさらし、かかわんないでーっとか叫んだところまでは覚えてる。
改めて思い出すと、あれはほんとに醜態で、恥ずかしくなってくる。
「ねー」
「……………」
「Aちゃん追試かもってまじ?」
「………」
「陽子ちゃんに聞いたんだけど」
「……まじ」
また布団の中でぼそっと言えば、あははっと笑い声が聞こえて、思わず「笑うな!」と布団から起き上がって怒る。
追試常連のあなただけには笑われたくないんだけど。
「ごめんごめん」とニヤニヤしている成宮を睨みながらいう。
「…誰のせいだと思って…」
「…俺のせい?」
「………あんたのせいもある」
.
「テストに集中できないくらい、俺のこと考えてくれたってこと?」
.
真面目な顔で、私の座っているベッドに手を置いて近づいてくる。
「…なわけ…」と言い返そうとするけど、図星なので歯切れも悪くて、尻すぼみ。
強気を装っていても、ぽろっと出た本音をずばり成宮に指摘されて、
恥ずかしさで心臓がばくばくとその存在をおおきく主張する。
「…俺のこと考えてたから、テストできなかったの?」
「…………………成宮が………昨日の夜…………せ、性行為に至ったとか言うから…………」
「…………………ごめん、それ嘘」
「…………………は?」
恥ずかしさに耐えて必死に説明する私に、成宮はぶっはっと吹き出して、椅子に座って大笑いし始める。
「ちょっと、嘘って何!」
「なんにもしてないよ!俺!」
「…………え?」
「普通信じないでしょ!なんにも………………セイコウイには至ってません!あはは!」
「ていうか今時セイコウイとか!Aちゃん!」とか何が面白いのか爆笑している成宮に、
私は怒りで震える拳を握りしめて、
脇に置いてあるカバンを掴んでカーテンを開けて出口に向かう。
「Aちゃ…あはは…待って…」
「嫌い!ほんとに嫌い!大っ嫌い!」
気持ちを込めて三回言うと、どすどすと廊下を歩いて保健室を後にした。
.
645人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ