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「ん……」
寝返りを打ちながら朝日をまぶたの奥に感じて重い瞼を開ける。
…開ければそこは見たこともない場所で、ジャージに着替えてる人の姿があってびっくりしてベッドから飛び起きる。
「あ、Aちゃんおはよう」
「おはようじゃない!は!?どういうこと!?」
あくびをしながら振り返ったその人は、成宮で、私は彼に向かってつかつかと歩み寄って問い詰める。
私はなんでこんなところで寝てるんだ。
というか、ここはそもそもどこなんだ。
「………ここどこ?」
「え、俺の部屋」
「いやいやいやいや、なに不思議そうな顔してんの」
「Aちゃんがあまりに気持ちよさそうに寝てたから、起こせなくって…」
「あなた起こすって言ったよねぇ!」
予想外の事態にテンパってしまってベッドから飛び起きて、成宮のアンダーシャツを掴む。
ぴよぴよと外から鳥の鳴き声がしていて、
しかも外が明るいということは。
目の前の事実にさぁーっと血の気が引く。
「………今何時」
「んー…6時」
「それは…朝だよね…」
「そうだね」
「………」
「なにAちゃん、俺と一晩共にしちゃったとか考えて照れてんの?」
「なっ何かしたの!?」
「………」
私がさっき血の気が引いたのは、家になんの連絡もしないで外泊してしまったことへの危機感だったんだけど、
よく考えたら男の部屋で、
しかも相手は私に謎の好意を持っている成宮で。
成宮は慌てる私にニヤニヤしながら、壁際までアンダーまま押し寄せると、どんっと壁に手をつく。
「ちょっ…成宮?」
抵抗する私を無視して、そっと耳元に口を寄せて小さい声で言う。
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「…昨日は可愛かったよ、Aちゃん♡」
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なに、どういうこと。
私の首元でなにやら嬉しそうにニヤニヤしている成宮を顔を引きつらせながら睨みつける。
「俺が好きな子とさー一晩一緒でなんにもしないと思う?」
「オモイマセン…」
「え、Aちゃん顔赤くなっ」
フリーズする脳を必死に働かせて、成宮を突き飛ばしてカバンを掴むと、急いで彼の部屋から飛び出す。
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寮からしばらく走ると、体力の限界を感じて立ち止まる。
力が抜けてスクールバッグを抱いてしゃがみ込んで、必死に顔をうずめる。
「…ありえない…」
頭の中の整理がつかないで、火照る頬は、全速力で走ってきたからだと思いたいけれど、きっとそうじゃないんだろうなと自分でも分かるくらいで、
深々とため息をついた。
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