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成宮
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「おやすみ」と言えば、Aちゃんは落ちるように寝てしまって、食堂には沈黙が流れる。
はやく終わらせちゃおうと問題集にむきあった。
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それから何分たったか、俺は答え合わせも終えた問題集の上に突っ伏す。
「……終わった」
こんなに勉強したのは初めてで、若干頭がいたい。
別に遠征費カットを防ぐためでも、
雅さんのためでもなく、
この子のためで。
突っ伏したまま顔を少しあげれば、すやすやと安心しきった顔で眠っているAちゃん。
立ち上がって彼女の近くまで行くと、少し起こしていわゆる姫抱きというやつで食堂を出た。
「鳴さん終わったんですか?」
「っ樹……」
「あれ、中野先輩寝て…どこ連れて行くんすか?」
「俺の部屋」
「鳴さあああん!?」
「樹、黙らないともっとたっかいものをパシらせるよ」
俺が睨みながら言えば、口を塞いで頷く樹。
おやすみ〜と言って向かった先は言わずもがな
エースのお部屋。
足で扉を開けて中に入ると、俺のベッドの上にAちゃんをのせる。
「……………んん」
肌寒いのか、俺の布団にくるまって寝返りを打つ。
そんな様子に今更ながら俺の心臓が高鳴り出して、正直参ったなと頭を掻く。
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………頑張ったし、少しくらいいいよね。
心の中で言い訳しながら、ベッドの脇に手をつく。
ぎしっとベッドの軋む音が、
妙にやらしくて、
なんかなんにも考えられなくなって、
Aちゃんの顔にかかった髪をどかして、
Aちゃんの唇に、俺のそれを押し付ける。
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出会った時のバードキスとは違う、舌まで出かかったキス。
心臓が波打つように存在を主張して、
顔が熱くてくらくらする。
でもなにより幸福感が胸に満ちる。
「っ…はぁ……」
唇を離すと、ほんのり赤く染まった彼女の頬に、俺の頬がゆるむ。
「相変わらずの独占欲だな」なんていうカルロスの声が聞こえてきそうだけど…。
俺がひとりでニヤニヤしていると、Aちゃんは俺から顔を背けるようにくるんと寝返りを打つ。
「………これ以上したらほんとに怒られるか」
俺も我に返って、予備の布団を床にしいてごろんと横になる。
よし、明日頑張って、Aちゃんとデートして、そろそろ付き合ってもらう。
そんなことを考えてたらまた頬が緩んでくる真夜中の俺だった。
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