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カルロス
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「微分と積分と仮定法が頭の中をぐるぐると………」
「鳴煮詰めすぎ」
テスト前日。
食堂の机で突っ伏す鳴に、俺と樹が苦笑いでいう。
無理もないか。野球一筋のおバカエースが死ぬほど勉強してるんだから。
「こんなに勉強したの生まれて初めて……」
「だろうな」
「よくこんなに続きましたね、絶対途中でなげだすと思ったのに」
「そりゃ…………Aちゃんとのデートのためだもん」
鳴は頬杖をついて口を尖らせる。
あんだけいつも周りを混乱させるくらい自己中に動いているこいつが、同じ学年の女子にうまく踊らされてる具合に面白おかしくて俺は思わずふきだす。
「カルロス………なに笑ってんの」
「や、エース様も好きな女の子の前だと形無しだなと思ってよ」
「うるさい」
「珍しくかわいいですね」
「樹黙って」
俺と樹をノートではたくと、ほんのりほおを赤らめている鳴。
…………珍しくかわいいじゃんよ。
「顔赤いよ」
「…………赤くない」
「中野先輩のこと大好きなんですね」
「だっ………!」
いつも普通に「好き好き〜!」と熱烈アタックしているのに、なんだこの有様はというくらい顔真っ赤にしている鳴。
人に指摘されると恥ずかしいというやつだ。
「先輩のどこが好きなんですか?」
「はっ!?そんなの樹に言うことじゃないじゃん!」
「いいじゃないですかー聞きたいです。だって鳴さんってもっと可愛らしい感じが好きだと思ってたので」
「言わない絶対言わない」
頬を膨らませて言う鳴は、いつもの余裕もなく樹も面白がっている。
食堂の扉のあたりにちらりと女の子の影が見えて、俺は思い立ったように言う。
「そーんなこと言って、ほんとは中野っちのこと好きでもなんでもないんじゃないの?お遊び?」
「は?……………俺は!Aちゃんのこと本気で好きなんだっつーの!!!!」
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「………………」
「あ、中野先輩」
半ば叫ぶように言う鳴にシーンとする食堂内。そして、入り口付近でこっちをぽかーんと見ている… 中野っち。
樹の言葉に鳴はバッと入り口を振り返って、フリーズした。
「……」
「今日もよろしくお願いします先輩」
「よろしく中野っちー」
「うん…」
「鳴ー?どうしたー?」
「Aちゃんタイミング悪いんだよ!!!!」
「は!?そっちが大声で何言っちゃってんの!?」
顔真っ赤にしてキレ始める2人に、また顔を見合わせる俺と樹だった。
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