【◇】私と成宮 (ページ21)

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「で、なんでこいつがいんの」

ブッスーっとしている鳴さんに中野先輩が「多々野くんも勉強教えて欲しいらしいから」と言うと「樹ジャマ」とにらまれる。

あのあと、「できたら私と成宮を二人きりにしないように一緒に勉強してくれませんか」と頼まれて、まあそんなことならお安い御用だと引き受けたけど、予想以上に鳴さんの目線が痛い。

まあ、首席の中野先輩に教えてもらえるなら俺のメリットにもなるから構わないんだけど。

「…多田野くん、ごめんね、ありがとう」

「…あ、いえ。あの、先輩ここって…」

いそいそと俺の隣に来てお礼を言う先輩にノートを見せると、「あぁここは…」と言いながら隣に座ってさらさらとノートを書き出す。

「余弦定理を使って、ちょっと応用なんだけど…」

「あ…なるほど」

「わかる？」

「はい、ありがとうございます！」

先輩の書いたノートを見るだけでストンと頭に入ってくるあたり、やっぱり頭のいい人はおしえるのもうまいらしい。

「次、これやってみて」と類題を指さす先輩に「はい！」と言って解き始めると、「はいはーい！Aちゃん俺もしつもーん」と言って手を挙げる鳴さん。

中野先輩は嫌な顔をしながらも鳴さんの元に行って「なに」という。

「好きなタイプは？」

「真面目な人」

「おい鳴、遠回しにお断りされてるぞ」

「多田野くんできたー？」

「待って！待ってAちゃん、ほんとにわかんない！ここ、わかんない」

「………あんたここ昨日も………」

「中野っち、俺もそこわからない」

「カルロスくんにも昨日言ったよ………」

「そうだっけ？」と笑う問題児二人に、ため息をつきながら頭を抱える中野先輩。

「仕方ない………もう理解させるのは諦める」

「へ？」

「私がヤマはるから、その問題を徹底的に暗記して！いい！？」

「え～俺暗記苦手だし……」

「つべこべ言うな！！」

「ひぃっAちゃん怖い！」

また夫婦漫才(怒られるか…)を始めるやる気のない鳴さんと中野先輩に、カルロスさんがさっと手を挙げる。

「なに、カルロスくん」

「提案なんだけど、俺と鳴のやる気を上げるためにも、何かご褒美を用意するというのはどうでしょう」

「いいね～カルロス！」

「……………」

絶対こいつら作戦会議してただろ。…丸わかりの棒読みのセリフに、俺と中野先輩は二人で呆れる。

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