【◇】私と成宮 (ページ19)

今日:14 hit、昨日:5 hit、合計:316,321 hit

19. ページ19

.

ぎゅうっと腰に手を回して抱きつくと、わたしのほうに体重を預けてくる。

私は成宮の肩を押し返してみるけれど、意外にがっしりしたそれはぴくりとも動かず、諦めて棒立ちだ。

「…Aちゃん」

「なに」

「好きだよ」

「…知ってる」

「や、分かってない。俺がAちゃんのことどのくらい好きか」

「…は？」

成宮はわたしのお腹のところでもごもごと呟くと、

腰に回していた手をするりと太ももにおとしていく。

いきなりのそれにぞくりとして離れようとするけれど、成宮のホールドはまだわたしを離す気配がない。

「やめてって！大声だすよ！」

「…満更でもないかおしてるよ」

「してない。気持ち悪い。やめて」

「…大丈夫。ちゃんと気持ちよくするから」

「そういう問題じゃない！！」

「大丈夫大丈夫」と言ってふにふにと触感を楽しむように太ももをなでたりつまんだりしながら、
いきなり制服のスカートに手を掛ける。

ばっと抑えると、「嫌がられると、もっとそそられるんだけど」と言いながらわたしのかおを見てニヤニヤする。

.

がらっ

.

「鳴さん、原田さんがそろそろおわれって…………」

いきなりあいた食堂の扉からのぞいたのは、鳴さんと呼んでいるあたり、後輩の部員だろうか。

「………空気読めよ」と小さく呟く成宮の腕から離れると、スカートを直しつつ教科書を鞄につめる。

「じゃあ私帰るから」と言って早めにその場を出て校門へ向かう。

.

『Aちゃん…好きだよ』

.

好きって言葉が聞き飽きた。なんて言ったら不届きものになってしまうけど、でも本当にそんな感じだ。

会うたびに正面からぶつけられる好意は何度も聞いたけど慣れはしない。

その後の行動は別にして、「好きだ」という言葉はあきれつつも、火照ってしまう頬は正直なのか、不可抗力なのか。。

「あ、あの！」

一人で悶々としながら歩いていると、後ろからさっきの後輩の部員らしきひとが追いかけてくる。

息を弾ませて私に追いつくと、「送ります」と真面目なかおで言われた。

「いや、私家近いんで…」

「もう暗いので。送ります」

「いや、ほんとに…」

「送らせてください」

「………あ、はい、じゃあお願いします」

「すみません、原田さんに送ってこいと言われたので」と苦笑いすると、歩き出した彼の背中を追い掛けた。

.