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「こいつらが追試常連だ。主に鳴」
寮につくと、原田先輩が成宮とカルロスくんを私の目の前に突き出す。
嬉しそうにニコニコしている成宮と、いつも通りどかっと座っているカルロスくん。
寮の食堂には私たち以外にもたくさん野球部員が揃っていてみんなもくもくと勉強している。
「他の部員からの質問にも、できたら答えてやってくれ」
「はい。がんばります」
原田先輩はわたしに笑顔を向けると、「ちゃんとやれよ」と成宮に声をかけて吉沢先輩という強面で有名な先輩を引きずって食堂から出て行った。
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「寝るなああああー!!!!」
叫ぶとびくっとカルロスくんと成宮の肩が動いて目を覚ます。
9時を回った頃から、うとうととし始めた彼らは放っておくと数分で眠りに落ちる。自分のテスト勉強そっちのけで付き合ってる私の身にもなってほしい。
「ダメだ…数字見るだけで眠くなる」
「なんでこんな簡単な公式が覚えられないのよ!!」
「ただの文字の羅列としか捉えられない…」
「………もうそれは頭回ってないからだよ…カルロスくん」
「…休憩しようか」と仕方なく提案すると、「ありがとうございました」と言って勢いよく食堂から出て行くカルロスくん。
止める暇もなく「あ…」と呟くと、成宮が「カルロス絶対もう帰ってこないよ」とアクビをしながら言う。
「…陽子、正直カルロスくんのどこがいいのか私にはさっぱりわからない…」
「カルロスよりは俺のがいいでしょ」
「…どっちもどっち」
私も欠伸をして教科書を閉じる。
報酬は出来高制でいいなんて言ってしまった手前、なさけないけど成宮とカルロスくんは相当強敵らしかった。
「…成宮、お水もらってもいい?」
「あ、厨房のほうから勝手に取っていいよ」
厨房に入って冷蔵庫を開けると、たくさんのスポーツドリンクの中からミネラルウォーターを取り出してコップにそそぐ。
カルロスくんが帰ってこないなら、私も今日は帰ろうかななんて思いつつ、水を喉に流し込む。
「…ん」
机に突っ伏す成宮の元に、コップに水をそそいで持って行ってことんとおく。
「んー」と言いながらわたしとコップを見比べると、「ありがとー…」と言って一気飲みする。
ごとんとコップを机に置くと、成宮は座ったまま、立っているわたしの腰に手を回す。
「ちょ、」
防ぐ暇もなく成宮にされるがままの私は、最近少し……甘い気がする。
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