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「お断りします」
「そこをなんとか」
「お断りします」
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お昼。
なんなんだこの状況。
私が三年生の大きなガタイの先輩に頭を下げられている図。
だからといって、こんなの断固お断りだ。
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「たのむ！追試回避しないと遠征費がカットされるんだよ！」
「………」
先輩の頼みというのは、「野球部(主に成宮)に勉強を教えてほしい」ということで。
中間テスト一週間前の今、常に追試ラインぎりぎりの彼らに冷や冷やしているそう。
「なんで私なんですか。先輩が教えればいいと思います」
「俺だって今必死に勉強してる状態なんだよ…。中野は常に成績トップだって鳴から聞いた」
「………」
「え、違った？」
違わないけど。
成宮を睨むと、へらへら笑って嬉しそうに言われる。
こんなの成宮の魂胆バレバレじゃないか。先輩にこんな話吹き込んで私を頼ってこないほうがおかしい。
ため息をついて先輩を見る。
「……お気持ちは察しますが、お断りします」
「俺と二人きりで勉強だよ！？嬉しくねぇの！？」
「二人きりじゃねぇからな」
「嬉しくない」と私が突っ込む前に先輩が成宮の襟元を掴んで座らせる。
成宮と一緒にいる先輩だから、どんなだと想像もつかなかったけど、成宮に振り回されてるのは私も先輩もそう変わらないらしい。
「申し訳ないですけど、人のために無償でテスト前の時間を割けるほど私だって余裕ないですし…」
「無償でとは言ってない」
「…？」
「それなりのものを返すつもりはちゃんとある」
先輩の言葉にピクリと動きを止める。成宮が「無償じゃないよ。俺の時間をAちゃんにあげるわけで」とか語っているけどそんなの右から左。
「先輩…」
真顔でずいっと近づく私に若干引き気味で「なんだ」と返事をする先輩。
「私、買ってもらいたいものがあるんです」
「……あ、あんまり高いものは無理だぞ…」
「出来高制で構いませんから」
「………」
むしろ頼むほうが逆になってしまっているこの状況に、疑問を覚えないわけじゃないけど、先輩は頭をかきながら「わかった」と答えてくれたのでよしとする。
「それじゃ…今日から頼んでいいか」
「はい、わかりました」
「ねぇ」
先輩の言葉に頷くと、成宮がぐいっと私と先輩の間に割って入ってくる。
ものすごく不機嫌なかおで私たちを見ると「近いんだけど」と睨まれた。
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