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「成宮さんと姉ちゃんが仲良かったなんて知りませんでした!」
「すごいわね〜、あんた、野球部のエースと!」
「付き合ってるのか!?」
「ないってば!」
「今後そうなる予定ですよ、お義父さ〜ん」
「お義父さん言うな!」
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何がどうなってこうなった。
うちのリビングで、ケーキを食している成宮。
うちの家族みんな成宮にデレデレしている。
「成宮さん!俺、野球やってるんすけど、成宮さんにすごい憧れてて!」
「お義兄さんって呼びなよ」
「いいんですか!?」
「よくない!」
「えー」と口を尖らせる良太。
そもそも、知らなかった。うちの弟が成宮に憧れてたなんて。
私は野球に興味がないから、良太と野球の話を全然していなかったし、当たり前だけど。
「ごちそうさまでした、今度、お義母さんの手料理も食べに来ます」
「あらー!楽しみにしてるわね〜」
「おかあさんっ!」
どいつもこいつも成宮にデレデレですか。
「いいからはやく帰ってよ」と言うと「えー俺もうちょっと成宮さんと話がしたい」と良太が文句を言う。
調子よくニコニコしてうちの母に取り行っている成宮。
「俺写真撮ってもらお!」とか言い出すもんだから急いで成宮を家から追い出す。
「もう…真っ暗じゃん怒られても知らないからね」
「そのときはAちゃんちにいってましたって言うよ」
「言うな」
ため息をつく私と、
自信ありげな笑みの成宮。
少ししかたっていないのに、
彼と知り合ってから毎日が悪い意味で濃密で、
明日もこの顔を見ることになるのかと思うと頭が痛い。
まえまでは、毎日がさーっと流れるように過ぎて行ってたのに。
「じゃ、帰るかなー」
「あ、成宮」
「なに?やっぱり離れたくなくなった?」
「返して」
彼の冗談(?)にも慣れてきて、手を突き出す。
成宮は苦笑いしながら「あーはいはい」と鞄を探って単語帳を取り出す。
それを受け取ろうと一歩近づく。
成宮は、私の手に単語帳を置くと、私が離れるまえにぐっと両手でほおを包む。
「っ…!」
「…好きだよAちゃん」
「………あ、そ」
近い距離で見る成宮に、目だけそらして返事をする。
誰でも好きと言われれば心臓も動き回るし、困る。
それも慣れてないような私にストレートに思いをぶつけてくる彼は、
きもいし、
重いし、
甘ったるい。
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どうかこの甘ったるい言葉に飲み込まれませんように。
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