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「ここでいいってば!」
「家まで送るって」
「いいから!ありがとう!さよなら!あなたの家はあっちですよ!」
あと100mほどでうちの家というところで、成宮に向かって反対方向を指差しながら言う。
今更ながら気がついたけど、うちにも同じようなのがいるから、きっと出会ったら大変なことになる。
「Aちゃんの両親に挨拶してから帰るからさ」
「アホなこと言ってないで帰ってよ!」
「えー送ってあげたのにその仕打ち…」
「だからさっきから言ってるでしょ!ありがとう!すごく助かりました!」
ぶーっと口を尖らせる成宮に、投げやりにそう言うと、いきなり私の腰を掴んで自分の方へ引き寄せる。
「ちょっ…」
もがく私を無視して、彼は私の首元に頭を寄せる。
必要以上に近い距離にどっどっどっと心臓の音が早まってかあっとかおがあつくなる。
いつもいつも、成宮が私の顔を見ない体制で近づいてくるから助かる。
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確実に、
顔、
赤い。
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「成宮!」
「………俺さ、今日がんばったよ?」
「……は?」
「……Aちゃん見に来てるからいつも以上に球走ってたと思うんだけど」
「………」
「少しくらい褒めてくれたってよくない?」
「………誰が」
「Aちゃんに決まってるじゃん。Aちゃんのために投げたんだから」
「………頼んでないし…」
「あーそう、そういう態度なら」
「な、なによ…」
「単語帳燃やす」
「わ、私は約束守ったでしょ!?返してよ!」
「…っそんなに勉強好きなの」
キレる私の首元で、くっくっと笑う成宮に、いらいらする。
みぞおちに一発かましてやろうかと構えていると、ふいに前からどさっと音がして、顔を上げると、
とんでもないかおでこっちを睨んでいる、
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我が家の成宮鳴がいた。
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「…」
「…良太…」
「誰それ」
「………なに?Aちゃんどうしたの?」
気の抜けた声でかおをあげて振り向く成宮。
良太は、落としたビニール袋を無視して、成宮に詰め寄る。
「あんた、うちの姉のなんなんですか」
「え、Aちゃんの弟くん?」
「弟ですがなにか」
「わー!俺、成宮鳴!お義兄さんって呼んで!」
「バカじゃないの!?」
意味のわからないことを言い出す成宮の頭を叩く。
絶対会わせるべきじゃなかった、この二人。
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うちの家の成宮鳴。
もとい、うちのシスコン弟、良太。
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