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「出口ってどっちだっけ…」
あれから、成宮はすぐに交代させられた。
自分勝手な投球が原因だろうってそばにいたOBの人が言ってたっけ。
そして、青道のピッチャーにデッドボールが当たってなんとも言えない感じで交流戦は終わってしまった。
陽子は家の用事とか言って修北対稲実が終わったら帰ってしまったけど、私はそのまま最後まで見て、
今帰ろうとしてこの状況。
さすが都内随一のグラウンドの広さを誇る青道。
迷った。
「あの」
目の前を歩いていた青道の選手に声をかける。
この人はたしか、青道のさっきの試合のキャッチャーをしてたひとだっけ。
「なんですか?」
「道に迷ったんですけど、校門はどっちですか?」
「………え、迷ったの?校内で?」
ぶっと吹き出して笑いはじめる彼。
ちょっと…失礼じゃない?
けらけらと笑い続ける彼にむっとして、睨んでいると、視線に気づいた彼は「ごめんごめん」と謝る。
「校門までは…」
「………やっぱりいいです。自力で帰ります」
「いやいや、おこんないでよ」
怒るに決まってるでしょ。
性格悪すぎじゃないの、このひと。
「道教えるからさ」と続ける彼を断固断って踵を返して歩き始める。
「あー。そっちじゃない」
「………いくら青道の校内が広いって言ったって、いつかはたどり着けるでしょ」
「だから、送りますよ。いつになるかわからないでしょ」
「いいです」とまたくるんと向きを変えて歩き出すものの、手首をぐいっとつかんで止められる。
「ムキになんないで。送るから」
「……」
じゃあお願いしますと口を開きかけた時、目の前の彼に掴まれた右手を後ろからぐいっと引かれて、
彼の手から私の手を離される。
そして、そのままぐいっと引っ張られてだれかの胸元にすぽんと入る。
「…一也」
「鳴」
鳴…ってことは成宮。
ぱっと顔を上げると、ぎろっとキャッチャーの彼を睨んでいる成宮。
怒鳴ってやろうと思ったけど、その顔が予想以上に冷たくて、なにも言えなくなった。
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「…さわんないでくれる。俺のだから」
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