2. ページ2
.
陽子が、意を決したように、きっと私の方を見つめる。
「A!」
「な、なに」
「ちょっとわたし、今日行動を起こそうと思う!カルロスくんに練習終わりに声かけてみる!…つ、着いてきてくれない?」
「いいよ」
「ほんとに!?ありがとう!好きだよAー!
なんだかんだ言って優しいし!」
「はいはい…え」
ぴょんぴょんはねながら嬉しそうに私に抱きついてくる陽子をあしらっていると、
マウンド上のカルロスくんがすごい気迫でこっちを見ている。
見ていたかと思えば、キッとキャッチャーの先輩のミットを見て、剛速球を投げた。
「アホかお前!今はアップだって言ってんだろ!!!」
そしてまた怒鳴られていた。
✳
「よーし!いってくる!」
「うん、がんばれ。私ここで待ってるね」
「うん!」
陽子が襟元をなおして深呼吸して、野球部の部室の方に駆けていった。
陽子はなんだかんだいって可愛いし、女の子らしいし、大丈夫だと思う。
長引きそうだなぁなんて思いつつ、鞄から単語帳を出して眺め始める。
暇つぶしにはやっぱりコレだ。
.
「あれ、出待ちー?」
「え?」
後ろから気の抜けた声がして、
振り向くと、カルロスくんが野球帽を頭に乗っけてカバンをかついで肩にタオルをかけて歩いてきている。
私の方を見て、にこにこ笑いながら近づいてくる。
「あれ、陽子は…?」
「だれそれ。っていうか君、俺の出待ちでしょ?」
「はい?」
「だって、さっき俺のこと見てたもんね」
「……見てません」
「見てたよ。目あったもん」
「…見てたとしても、あくまでわたしは友達の付き添いで」
「…………ちぇっなんだそれつまんね」
ポケットに手を入れて口を尖らせて、小石をこつーんとける。
仕草の一つ一つが子供っぽくて、やっぱりこの人は、かわいいに分類される人だと思う。
ていうか陽子!カルロスくんはいいの!
.
再び単語帳に目を落とす私を見兼ねて、カルロスくんが私の手から単語帳を取り上げる。
と、ふふんと笑ってずいっと顔を近づけてくる。
「ねぇ、俺、あんたのこと好きなんだけど」
「…………え?」
.
耳を疑った。
.
「付き合わない?俺のこと好きでしょ?」
645人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ