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『うちの野球部にとんでもないやつが入ってきた』
そんな噂を、聞いてないわけじゃない。
ずっと隣で陽子が騒いでたから、
完全に耳には入ってたし、ふーんと思ってた。
でも、関わりのない以上、
それはわたしにとってどうでもいいことだったから、無頓着でいられたんだと思う。
1年の時は。
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「きゃーもうかっこいいー！」
打ち上げた白球が空に綺麗に放物線を描いて飛んでゆく。
カルロスくんが好きとかいうわたしの友達についてきて、いまは野球部の練習を見ている。
うちの野球部は有名らしいんだけど、
正直野球とかよくわからないわたしは、
一度も練習ましてや試合すら応援に来たことがなかった。
だから私にとって、
カルロスくんってどれだという話から始まる。
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「A！ちょっ！
どうしようカルロスくんがこっち向いてた！」
「……気のせいじゃない？」
「気のせいじゃないよ！
ほら！だって今もこっち見てるじゃん！」
「…えー？」
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グラウンドに目を向けると、こっちを向いてる人を発見する。
あれが噂のカルロスか。
こんな可愛いのがタイプだったっけ、陽子は。
首をかしげる。
いつも、テレビのなんとかという俳優がかっこいいと見せてくるのは男らしい感じのひとだ。
カルロスは、なんというか真逆。
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くりんとした目がこっちを見て離さない。
キャッチャーのごつい先輩に声をかけられても、無視。
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「あれがカルロス…」
「呼び捨てしないでよ！
本当かっこいい結婚したい」
「…陽子はあんなちんちくりんがタイプなの？」
「カルロスくんのどこがちんちくりんよ！」
「どこって…」
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ガタイがいいのが多い野球部の中じゃ、一番ちっちゃいんじゃない？あのひと。
目がクリクリしてて、
動きがいちいち小動物っぽい。
女子には、かっこいいってより、かわいいって好かれそうなかんじするけど。
陽子にはアレがカッコ良く見えるのか。
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「……私にはかっこいいとは思えない」
「冷血女…」
「それを言うなら、わたしはキャッチャーの先輩のほうが好きかな」←無視
「冷血な上にA、世間と感覚ずれてるよ」
「陽子、それ失礼すぎるからね」
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