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「Aさん、て？」
ジトっと見られ、言葉に詰まる。
「ここで会ったことがあって」
「うん」
「よく話す人で」
「うん」
「…前家に泊らせてもらったことがあって」
「うん？！」
「あ、何もない。何もなかった」
口を横に引っ張り眉をあげ驚く和輝を見て、同じ顔をしてしまう。
「いやわかるよ。驚くよね。なんというか…不思議な出会いで」
「いや本当に。怖くない？素性もよくわからないんでしょ？」
「そうなんだけど…。あ！飴！飴をもらったんだよ前。ここで会う前に、ツアーの移動中サービスエリアで」
「ああ、あの飴…？ますますわからないけど、理の気になる子がAさんということはよくわかったわ」
笑いながらグラスを傾ける和輝に、おれってそんなわかりやすい？と聞くと大きく頷かれた。
「和輝もここで、あのテーブルで一緒に飲んだことあるって」
「そうか…さすがに覚えてないけど。顔見たら思い出すかな」
今日来てくれないかな、和輝を見てどんな顔をしてどんな話をするかな、とよぎったけど、Aさんは店には現れなかった。
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Azを出て和輝と街を歩く。
このまま帰るか、もう一軒飲むか迷っていたところで、良さそうなお店が見つかったら入ろうと話しながら歩いた。
見覚えのある白いコートが目の前で風に揺れた。
「…Aさん？」
声をかけたつもりが小さかったのか、彼女はこちらに気づかない。和輝もおれの目線を追って、彼女が、とかなんとか呟いていた。
Aさんしか目に入っていなかったが、男と話している。
いつもどおり柔らかな笑顔だったけど、少し困っているように見えた。
「わたし今日は、」
「いいから。お願い。ね？連絡先も教えてくれないし、会えた時は一緒に飲もうよ」
男の声がはっきり聞こえた時には、もう足が勝手に動き出していた。
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作者名：あこ | 作成日時：2021年12月14日 15時
