【五条悟】ブラックスマイル 2

74. 人形から人間へ ページ41

【家入side】




「…何があった？」


医務室に入ってきたのは五条とA。
Aの手には生傷がある。



五「言っとくけど僕がやったんじゃ無いよ」

「そんな事は分かってるよ」

『……誰も悪くないの。

たとえ違う形だとしても、私は人を傷つけた。
それがそのまま返ってきただけ』



私も子どもじゃない。
本人が納得してるならそれ以上言及もしない。



「…そうか」

五「じゃあ僕はこれで。A、また明日ね」

『…うん』



五条を見送るその横顔は
どことなくいつもとは少し違う笑顔だった。

まるで何か不安な事があるような感じ。



…聞けば、答えてくれるだろうか。
それともまた彼女の重荷になるだろうか。


迷っていた時だった。



『…1月12日生まれ。B型』


そんな事をポツリと呟いた。


「？」


『私の誕生日と血液型。

出身地は面倒だから東京って言ったけど
本当は京都出身』


「そうか。…なんで教えてくれたの？」


『…自分の事なんてどうでも良かった。
認識してもらうような価値は無いと思ってた。


だから何も考えるのをやめた。

好きな食べ物も、好きなブランドも
本当にどうでも良かったから答えられない。


忌み子のように生まれて来て
何人もの命が私のせいでに散っていった。

そんな自分が幸せになる事など許されないと教えられてきたし、自分でもそう思っていた。



だけど五条くんは…

ありのままの私を理解しようとしてくれて
その上で、幸せになる事を望んでくれている。

何度私が拒もうと
ずっと向き合おうとしてくれている。



それが…今になってようやく
とても嬉しい事なんだって気づいた。


…硝子が私に優しくしてくれてた理由も
今なら少しだけ分かる気がする。


気付くのが遅くなって…ごめんね。
本当に…いつもありがとう』




初めてだった。

こんなに感情を表に出して
私に縋るように抱きしめてくれたのは。



再開して、話せば話すほど
それまでには見えなかったものが見えていく。


もしかすると、初めて私は
Aと『話している』のかもしれない。



ただただ綺麗で人形のようだったAは

綺麗な人形でいようとしていたAは
もう存在しない。



そうさせたのは…きっとアイツだろう。

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