【五条悟】ブラックスマイル 2

69. 壊れていたのは ページ34

【？？？side】



この女と出会ったのは7年前。
その美しさに一瞬で目を奪われた。

「欲しい」。直感的にそう思った。


俺は頭が良い。顔も良い。簡単に人を釣れる。
人を釣れば金に変わる。単純な話だ。

言い寄ってくる女もごまんと居る。
だけどこの女だけは違った。

俺を拒絶することは無いが、自分から何かを
求めるような事はしなかった。

心底惚れ込んでいる俺に対して
「必要ない」と言われているようなものだった


家も、服も、何もかも買い与えた。
それでも何も変わらなかった。





調べても、この女の過去は幼い頃に両親が
死んだという事しか出てこない。

本人に聞いても、そうしてはぐらかされるだけ
おそらくあの怪しい高専組織絡みで情報が出ていないのだろう。


とりあえず確実に言えるのは
この女は人形のように空っぽな人間だった。


次第に自信が無くなっていった。

そんな女に自分が翻弄され続けている事に。


これだけ尽くしてやっているのに
どうしても自分のものにならない事に。


どれだけ酷く抱いたって
どれだけ酷く殴ったって
どれだけ酷く罵ったって


『ごめんなさい』なんて薄い言葉を言いながら
変わらず、笑っているだけだった。



俺ばかりが必死で、この女は余裕で。



今だってそうだ。

首にナイフを突き立てて
今に死んでもおかしくないはずなのに。



「…何笑ってんだ！」

『…昔、こうして殺されかけた事がありました

それがとても懐かしくて』




女はナイフの刃を握り返す。
グチュ、と生々しい音とともに血が溢れ出る。

「何、してんだよ」


イカれた女だ。何を考えてるのか判りはしない


気持ち悪い。そう、だから気持ち悪いんだ




「本当…何なんだよオマエ！！！
頭がおかしくなったのか！？」





『…あなたは、私と良く似ている。

自分に素直になれないから人を傷つける。
私たちは自分を受け入れるのが怖いんです。

だからあなたは私を支配しようとした。
だから私はあなたを受け入れようとした。


私は私を守るためにあなたを利用し続けた。


本当に…ごめんなさい』





女はいつの間にか

今まで見たことが無いくらいに
苦しそうな顔をしていた。




…何で、オマエが謝るんだ。

そういう所が余計に___『どーもー』




五「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。

Aのヒーロー、さとレンジャーです」




破壊されるドアの音ともに現れたのは
五条悟だった。

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