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『……浄化の光よ』
その言葉と共に、彼女からは暖かく優しい光が漏れ出る。その光を警戒した狼は、避けるように移動したが、その光は狼を包んだ。
だが光が晴れる前に、狼は彼女に向かって飛び掛かってきた。浄化は失敗。魔獣になってから、月日が経っているものだったのだ。
彼女は咄嗟に体を横にずらして狼から逃れられたが、まぐれに過ぎない。幻獣王の力を宿していても、自分の意思で使うことが出来ない彼女には、逃げる以外に成す術がなかった。
彼女は本能的に“背を向けたらいけない”とわかっているのか、狼の動きをじっと見つめてゆっくりと後退する。
彼女の動きを見ているのは狼も同じ。目の前の獲物に隙が出来るのを、伺っているのだ。
緊迫した空気が漂う。彼女が横に移動すれば、それを追うように狼は体の向きを変える。一歩退くと、一歩進む。それを何度か繰り返していたが
『っ!?』
足元に合った石に躓いた彼女は、バランスを崩して後ろへ倒れてしまった。その隙を見逃すはずの無い狼。大きく口を開けながら、再度飛び掛かってきた。
「ストーンバレット!」
その声が聞こえたと同時に、
何があったかわからない彼女は、狼の方を向いていた。いくつかの礫が体に刺さっているから、立ち上がるのに時間を要している狼が見てとれる。
「こっちだ!」と石礫が飛んできた方から、声が聞こえたので、今度はそちらへ顔を向けた。
一人の小さい髭面の男が急かすように、彼女へ近寄って手を取り立たせたら、腕を引いて全速力で走り出す。
「アイツはあんなんじゃ倒れん!動けない今のうちに離れるぞ!」
走りながら説明してくれるその人に、彼女は息を切らしながら一つ頷いた。怪我をしている足で走るのは辛いものがある。ましてや走ったことすらない彼女だが、今はそんなことを言ってる場合ではない。
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雪丗(プロフ) - キキさん» こちらにまで来て頂き、ありがとうございます。こちらの小説更新はカメさん以下の速度になるかと思いますが、少しずつ更新していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。 (2019年1月24日 13時) (レス) id: b6a8bd3c6a (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - チェシャ猫が好きすぎて、こちらにも遊びに来たのですが…こっちもすごく面白いです!トレントの場面、ドキドキしました!どのキャラクターも皆、素敵ですね♪ファンタジーの不思議さやカッコよさがとても伝わってきます。無理なさらない範囲で、がんばってください! (2019年1月23日 22時) (レス) id: cc6696e063 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 雪丗さん» アドバイスありがとうございました!参考になりました! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 如月 唯奈さん» アドバイスが出来るかはわかりませんが、小説を読まさせて頂きます。読み終わりましたら、如月様の小説の方へコメント致します。少々お時間下さいませ。 (2018年12月12日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 私もファンタジーのオリジナル小説を書いているのですが、表現が上手くできません……何かアドバイスくださいっ! (2018年12月11日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪丗 | 作成日時:2018年11月22日 0時