【gnsn】公女様！ (ページ4)

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「…わかった。」

そう渋々頷くと、ポン、と頭に置かれた大きな手。

「拗ねてる？」

「拗ねてない。」

視線を絡ませてくるタルタリヤから逃げようと顔を背けた。

しかしそれと同時に頭に置かれていた手がゆっくりと頬を伝い顎を掬いあげる。

タルタリヤの手によって視線が交わり、数秒の時が流れた。

「…少しだけ拗ねてる、かも。」

本当の事を言わないと逃してくれないと判断した私は苦渋の決断の末、そう言葉を落とした。

「公女の為に、すぐ終わらせて帰ってくるよ。」

顎から手を離したタルタリヤは、今度は私の髪をさらりと救い上げ、そこに口付けを落とした。

そしてまるで絵に描いた様にゆっくりと片膝をつき、私の右手を取る。

「我らが公女様。」

それは女皇様に忠誠を誓う時にする敬礼だとすぐにわかり、思わず頬が緩んでしまう。

先程の小さな蟠(わだかま)りが嘘のように解けていって、

「気を付けて行って来てね___…」

私もそのまま片膝をつく。

スカートの裾が床にはらりとつき、顔を下げる。

これは、部下が執行官様に対しする敬礼。

「我らが公子様。」

執行官(ファトゥス)の敬礼と、部下の敬礼は似て異なる。

執行官(ファトゥス)である公子は顔を上げ、部下___…執行官(ファトゥス)ではない私は顔を下げる。

目の前に女皇様がいない今、この敬礼は何の意味も成さない。

けれど、今はそれは差程重要では無い。

「俺の前では顔上げていいって言ってるのに。」

そのまま手を引かれ、すっぽりタルタリヤの腕の中に収まった私は目の前の温かい体温を感じ取る様に縋りついた。

忠誠を誓っている女皇様と同じ様に、私にもその敬礼をしてくれた事がとても嬉しかったから。

だから、私は信じて待とう。

笑顔で見送ろう、公子様の為に。