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4話 ページ4

それから僕は高等部に進学した。
クラス名簿をいくら探しても“蘭堂A”という人物はいなかった。

わかっていたことだったけれど、少しだけ期待していたのが馬鹿みたいだ。


彼女はもういないという現実を突きつけられた。



彼女はどこか遠くへ行ってしまったのだと。



Aは人当たりも良く友人もたくさんいた。Aは友人にすら何も告げていなかったようで、Aの友人達から僕は幾度となく彼女について聞かれた。



『なんでAがいなくなっちゃったのか知ってる?』

『幼馴染でしょ?知らないの?』

『私達、あの子から何も聞いてない!』



Aがいなくなった事実に耐えきれずその場で泣き出す子までいた。


時透君はAと幼馴染でしょう、と。
家族ぐるみの付き合いだったんでしょう、と。

何度も何度も何度も何度も。



でも、それを聞きたいのは僕なんだよ。僕が知りたいんだよ。

その質問をされる度に、僕は唇を噛み締めた。



中等部の先生達に聞いて回っても誰も教えてくれたなかった。家庭の事情を無闇矢鱈に話すことはできない、と。

最後の伝さえ簡単に切れた。藁をも掴む気持ちだったのに。



悔しくて悔しくて仕方がなかった。
僕がまだ子供だから。Aのことを捜すことすら叶わない。

本当に無力で非力な人間だ。








.

















少しずつ、周りの人達はAのことを“思い出”に変えていった。

一年も経つとAは“突如姿を消してしまった友人”くらいの感覚で扱われるようになったし、ほとんど話の話題になることもなくなった。



そんな世界で、僕は彼女を“思い出”に変えることなんてできなかった。

たった一人、取り残されたような感覚に陥った。

















今でも、ずっと。捜してる。

大切で大切で仕方がない彼女を。
桜の花びらのように颯爽と姿を眩ませたあの子を。

聡明な決意とは裏腹に、月日は淡々と流れていった。

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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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