検索窓
今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:111,194 hit

3話 ページ3

.




『時透君、Aが電話に出ないんだけど、何か知らない?』



卒業式から三日経ったある日。Aと仲の良かったクラスメイトからそんな連絡を受けた。

おかしい。Aが電話に出ないなんて。
どこか家族で旅行にでも出掛けているのか。


不審に思い僕はAの家に足を運んだ。








そこは、Aの家はものの抜け殻だった。

焦った。冷や汗が伝った。なんでAの家の荷物が全部なくなっているんだ。車が一台も止まってないんだ。“蘭堂(らんどう)”というAの苗字である表札がないんだ。


わけがわからなくなって軽くパニックに陥った。なんで、どうして……。



そこに偶然、Aの家の隣人さんが家に帰ってきた。挨拶する余裕もなく、縋るようにその人に尋ねた。



「Aは、どこに…っ」



隣人さんは酷く寂しそうな、驚いたような顔をしてこう言った。



「蘭堂さん家は中学の卒業式の日の夜、引っ越しちゃったのよ。
聞いて、ないの?」



頭の中が真っ白になった。視界から色がなくなった。


聞いてない。聞いてない。
そんなこと、何一つ聞いてない。



だって、高等部でも同じクラスになれたら良いねって話してたじゃんか。

ここからいなくなるなんて言ってなかったじゃんか。



「どこに、どこに引っ越したのかわかりますか!?」

「…それがねぇ…」



その人は渋柿でも食べたような苦い顔をした。
何かを悲しむような、そんな表情。


結論から言うと、誰もAの一家がどこへ引っ越したのかわからないらしい。どこに越すのか聞いても、上手い具合にはぐらかされて教えて貰えなかったんだと。



絶望の淵に立たされるってこういうことなんだと。この日、生まれてはじめて初めて思い知らされた。

4話→←2話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (285 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
161人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。