忘れてしまった君に焦がれる。【時透無一郎】

25話 ページ25

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おかしい。あの日、一緒に遊園地に行った日からAからメッセージの返信が来ない。

面倒くさがりやなところがあったから昔からメッセージの返信は遅かったけれど、もう一週間も返信がない。



何かあったんじゃないか、そう思いいても立ってもいられなくなった。

法学部の人なら何か知ってるかもしれない…。



「ねぇ、君って法学部だよね？」

「え、うん。」



たまたま法学部の棟に入ろうとしていたある一人の男子生徒に尋ねた。



「蘭堂……ううん、雨鈴Aって来てる？」



その男子生徒は少し顔を曇らしてこう言った。

その言葉を聞いた俺は、もう講義なんて受けている余裕もなく、気づけば大学を飛び出していた。





「雨鈴さんなら交通事故に遭って……今はこの辺りで一番大きい総合病院で入院してるって聞いてるよ。」








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「……っここ、か…。」



大学の講義をサボったのはこれが初めて。でもそんなこと今は気にしちゃいられない。


この辺りの一番大きい総合病院だと思われる病院まで走った。今思えばタクシーでも使えば良かった。でも、そんなこと頭に浮かび上がらないくらい僕は焦っていた。



ずっと走っていたから息が上がってる。でも呼吸を整える時間すら勿体ないように感じてしまった。


院内に入るとすぐに受け付けで食い入るように尋ねた。



「あの…！雨鈴Aって言う人はいますか？」



あまりにも必死な様子の俺に受付の人は戸惑いを隠せないようだったが、案の定、Aが入院していたようでなんとか病院を教えてもらうことができた。



エレベーターのボタンを押す手が震える。

Aは平気なのだろうか。意識はあるのだろうか。
最悪の事態まで脳裏を掠める始末だ。

大丈夫、大丈夫…。自分にそう言い聞かせながらAの病室まで向かう。



怖い。一度彼女が目の前から消えた時の悲しみと喪失感を知っているからこそ、再び失ってしまうのが恐ろしくて仕方がないんだ。

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