6話 ページ8
手早く楽器を片付け、教室の隅にまとめて置いておく。
明日も合同練習をすることになっているので、楽器は一晩だけ置かせてもらう。
この一日でけっこう先輩と話せるようになった。恐るべし先輩のコミュニケーション力。
泊まることになっているホテルまでは、徒歩15
分ほどのところにある。
だが、みんななかなか移動しようとしない。なぜだ。
「ねえねえ、移動せんでいいん?」
近くにいた亀ちゃんこと亀広 密希(かめひろ みつき)に聞いてみる。
「野球部の人と一緒に行くらしいよ。話聞いとけ、ばーか」
密希なんて甘そうな名前をしてるのに中身はドライである。
「全然話聞いてなかったわ。でも、なんで一緒に行くん?」
「さあ?知らね」
「なんか、あっちの野球部もうちらと一緒のホテル泊まるんやって。寮がしばらく使えんらしい。つか、亀ちゃんも話聞いてないやん」
結愛に煽られ、亀ちゃんと結愛のからかいあいが始まった。いつものことだから気にしない。
「あ、来た」
見るとそこには全身泥だらけの野球部がいた。肩にかけたエナメルバックが重そうだ。
にしても、人数多くね?ベンチ入れなかった人吹奏楽部(こっち)によこせ。そして威圧感がすごい。
「こ、怖っ…」
我が吹奏楽部のマドンナ、りっちゃんこと白崎律歌(しらさき りつか)が怯えているではないか!
なにしてくれとんじゃごるあ。
心の中で密かに威嚇しておく。口には出さない。二年前、いろいろあって大変だったのよ。
ふと、優くんと目があった。今度はあっちから手を振ってくれたので、私も、嬉しくなって手を振り返した。
「ど、どうしよう…怖いんやけど…」
「てきとーに睨んどけば?」
「お前の返答のほうが適当すぎるわ」
「ありがとー」
「誉めてねえし」
それから移動することになったものの、野球部対吹奏楽部という感じですごく気まずい。
いや、もうこれさ、一緒に行く意味なくね?誰だよ変なこと言い出した人は。
優くんに話しかけてくるか。いや、めんどくさいな。やめよう。今、お話中みたいだし特に話す話題もない。
それより野球部の声がうるさい。「うるせえぞ沢村ぁ!」という沢村サンへのヤジが飛ぶがそれもまたうるさい。
「A、久しぶりだな」
呼ばれて顔をあげてみると、優くんが目の前にいた。そして、それと同時にメガネをかけた人とも目があった。
あっ、朝の人だ。
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作者名:黒木 のの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年4月1日 15時