2話 ページ4
高速道路を降りしばらくすると、だんだん建物の数が増え、東京らしい町並みが見えてきた。
田舎者の私たちには、高い建物に驚くばかりだ。
(けっこう都会の方にあるんやねえ。)
「みんな、そろそろ荷物まとめてー!」
部長、打楽器パートの長瀬 絃(ながせ いと)の声がとぶ。
ブランケットを畳み、リュックの中を整理する。といっても、楽譜と譜面台くらいしかないのだが。
楽器はトラックで運ばれているため、ここにはない。
女子が多い為か、車内はガールズトークが飛び交っていた。
「格好いい人いるかなあ!」
「それより、先輩怖かったらどうしよう…」
「それな!ヤバい、お腹痛くなってきた」
「えっ、大丈夫?」
そんな話を聞きながら、窓の外を眺める。隣には、同じように暇そうなゆりが鼻唄を歌っていた。曲はJupiter。ゆりが歌うとふざけて聞こえてしまうのはなぜだろう。
「ねえねえ。青道高校の吹奏楽部、160人くらいいるらしいよ」
「マジで?ヤバイな」
特にすることもないので、話しかけてみる。
「バリサクとかバスクラとか、3人くらいいるらしいよ」
「へー。すげえな」
適当な返事が返ってきた。いつものことだから気にしないけど。
「着いたよ!荷物持って前の人から降りて!」
再び、部長の声がとぶ。騒がしい中でもよく通る声だ。
「うひぁ、めっちゃ校舎でかいやん!」
さすが私立といったところか。
楽器をトラックから下ろして受けとると、玄関では、向こうの部長さんと顧問の先生方が出迎えてくれた。
(うわあ、玄関もめっちゃ綺麗やし広いなあ。)
感心しながら辺りをキョロキョロしていると、野球部らしき練習着を着た集団が見えた。
「ねえ、あれ野球部じゃね?」
「ほんとや。確か、青道高校野球部って強いらしいな」
近くにいたクラリネットパートの明奈(あきな)と二人で語っていると、見覚えのある人物を発見した。
「あっ!あれ、優くんじゃね?」
「誰やし」
「知らんの?うちの知り合い」
「知るわけないやろ」
「手、降ったら気づくかな…」
「やってみたら?」
明奈と二人で手を振ってアピールしてみる。
「これ、うちがやる意味ある?」
「ないよ」
「おい」
「とりあえずやってみてさ、二人のほうが気づかれやすそうやん?」
「しゃあねえな。一緒にやってやるよ」
「きゃっ、明奈ちゃんかっこいい♡」
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作者名:黒木 のの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年4月1日 15時