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「ん!うまい!めっちゃうまいで!」
「ほんと?よかったあ」
出来上がったカレーの味見をして感想を伝えると、Aちゃんは安心したように笑った。
「ほんまほんま!俺、毎日食いたいくらい!」
「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえると、作りがいがあるよ」
時計の針は8時を指していた。
うらさんが来るまであと2時間ほどある。
ふたりきり、なのだ。
しかも、Aちゃんの部屋で。
カレーを作るAちゃんの後ろ姿を見ながら話をしていたら、自分が何かしでかしてしまいそうな気がして気が気じゃなかった。
はやくうらさんに来てほしい、と思う反面、
もう少し2人きりでいたい、とも思う。
「まだ時間もあるし……テレビでも見よっか」
「そうやね」
Aちゃんは俺に背を向けて部屋に入っていく。
俺はその後ろについて、彼女の隣に腰かけた。
この時間はどこもバラエティ番組をやっていて、夏休みのこの時期なので、特番ばかりだ。
お笑い番組を選んで、エアコンの効いた部屋で誰が優勝がを予測し合う。
「あ、俺この人たち好きなんよ」
「そうなの?」
「そうそう!めっちゃおもろいねん!」
「坂田くんがそういうなら、楽しみだな」
俺のお気に入りのお笑い芸人がコントをはじめる。
やっぱりそれはおもしろくて、2人で腹を抱えて笑う。
そのときに、肩が触れ合ったり、手が触れ合ったりするから、俺はそのたびにドキドキしてしまう。
………ちょっとくらい、いいかな
ふたりきりだし、誰も見ている人はいない。
俺は、勇気をだして、偶然触れたAちゃんの手を触れ合った方の手で包んだ。
彼女の手がぴくりと反応するも、振り払われる気配はない。
横をむくと、Aちゃんは顔を真っ赤にしてテレビを見ていた。
「Aちゃん」
「なに?」
「こっち向いてよ」
「………やだ」
「なんで?」
「だって……なんか、恥ずかしいから」
ぼそぼそと小さい声で呟かれた言葉は、明らかに俺を男として意識したものだった。
「意識してくれてるん?……嬉しい」
気をよくした俺が、そう耳許でささやくと、Aちゃんはびくりと肩を震わせてこちらを見た。
俺が彼女の耳許で囁きかけたせいもあって、互いの息づかいが分かるくらい、距離が近い。
「Aちゃん……」
このままキスしてしまおうか。
甘い誘惑が頭をよぎった。
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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時