グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ9)

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次の日の朝も、坂田くんはいつもより30分も早起きをしてバスに乗ってきた。

「Aさん、おはよ!」

私もおはようと小さな声で返して、彼に促されるまま、また隣に座った。

「昨日はありがと!Aさんのおかげで補講回避できた！」

「よかったね。あの先生、厳しいって聞くもんね」

「せやねん。俺、文系科目苦手やからほんましんどい」

「そうなんだ」

「だから、また小テストあるとき英語教えてな!!」

「う、うん。がんばろうね」

坂田くんは不思議な人だ。
なんというか、つい力になってあげたくなる人だ。

いろんな人を惹きつける魅力のある人だとも思う。

こういう人が、きっと「上」に行くんだろうな、と私は漠然と思った。

彼の赤い髪が朝日に照らされて燃えている。

坂田くんの髪は陽の光に透けて、ときどき本当に燃えてるんじゃないかってくらいに赤くなる。

いまはまだ、焚き火位の火力だがきらきらしていてなんだか暖かく感じた。

バスが音を立てて停車した。
気づくと、高校前まであと1駅だ。

「テストまであと1週間ぐらいやんなぁ」

そう、中間テストが再来週に迫っていた。
来週1週間はテスト勉強期間になるので、基本部活も全て休みになる。

都指定の強化推薦部の人たちは、自主練と称して練習をするらしい。

「テスト、緊張するね」

「俺は英語が赤点の予感しかせんから不安やわ」

彼がため息をつく。
相当英語は苦手なようだった。