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それからというもの、早坂さんの猛アタックがはじまった。
休み時間にお手洗いに行くと、坂田くんのクラスの前で2人が話しているのを何度も見かけた。
恋する乙女の行動力はすごいな、とつくづく思う。
私もいつか、そんなふうになれるのだろうか。
「ねえ、Aさん」
「……早坂さん」
話しかけてきた早坂さんはすこぶる機嫌がいい。
おおかた、坂田くんと話してきたあとなのだろうと思った。
「前に言ってた坂田くんのタイプの子、聞いといてくれた？」
「ご、ごめんね。まだ、聞けてなくて…」
「ふーん、そうなんだあ」
彼女の機嫌が一気に悪くなるのがすぐわかった。
私の体は一気に緊張した。
選択肢を間違えた、と私は思って、背中に冷たいなにかが下がっていくのがわかる。
「私、そろそろ坂田くんとデートとかも行きたいの」
だから、ね？と早坂さんは可愛らしく首を傾げるが、私には恐怖でしかない。
「明日までには聞いてきてくれるよね？」
念を押すように早坂さんは私に言った。
「う、うん。やってみるね」
「そ。じゃ、よろしく」
彼女は当然とでもいうように頷くと、満足そうに教室から出ていった。
彼女が教室から離れてようやく、私は緊張から解放されて、どっと息をついた。
肩から力が抜けて、どれだけ自分の体が強ばっていたのかがわかる。
「明日までなんて、ムリだよ…」
小さな声で言った言葉は、教室の喧騒にかき消された。
私は帰りのバスを思って、もう一度、ため息をついた。
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年11月12日 17時
