選択 ページ32
結局、一睡もできないまま夜が明けた。
Aはベッドにうずくまって、ずっと考えていた。
「あいつらが君のことをどうでもいいと思っているなら、危険を冒してまでナイトメアの夢の中に入っていったりしない」
男はそう言っていた。まふまふにも話は聞いたけれど、ナイトメアの悪夢の中に入り込むということは、自分自身も悪夢に呑まれて死ぬ可能性があるということ。彼らは、自分のことを省みずに助けに来てくれたのだ。
そんなふうに言われると、自惚れたくなる。
でも、きっとそうじゃない。
禁忌の子だから、死なれたら困るから、助けたのだ。
思わず期待してしまいたくなる自分に、Aは必死に言い聞かせた。そうしなければならないほど、あの悪魔たちは優しかった。離れがたく思うほどまでなっていたとは思わなかった。
コンコン、と扉をノックされてAの思考はそこで途切れた。慌てて起き上がると同時に、ドアが開けられる。
「A、起きてる？」
ひょっこりと顔をのぞかせたのは、志麻だった。体を起こしただけの状態なのはバレバレで、志麻はクスリと笑って「おはよう」と言った。
「ちゃんと寝たん？」
「それなりに……」
「嘘つけ」
彼は即答して私に近づいてくると、頬に手を当てた。親指で目の下をすっとなぞり、
「隈、できてるやん」
と困ったように眉を下げる。Aはなんだか申し訳なくなってしまって、志麻から視線を逸らした。
「寝るの、怖い？」
ナイトメアの直後だし、と彼は小さくつけたした。もちろんそれもあったけど、それ以上に大きな問題が主たる原因だ。Aはゆるく首を横に振る。
しばらく沈黙が落ち、志麻はため息をついた。呆れられた。Aは胸の奥がつきりと痛んだ。助けてもらったのにさらに迷惑をかけているんだから、呆れられても仕方ないのかもしれない。
志麻はAのすぐ隣に腰を下ろすと、
「………………じゃあ、俺らのことは？」
と聞いた。
Aはまた首を振る。何度も助けてくれて、優しい彼らを怖いと思えるはずもなかった。前に好感を持ってもらってから食べるのだとうらたは言っていた。いま彼らに「エサになれ」と言われたら、きっとそれを受け入れてしまうだろう。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
