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「…………そうか」
志麻が言ったのは、それだけだった。けれど、それはどこか安心したような響きを持っていた。
彼はAの頭の上にぽん、と手を乗せると、髪を撫でるようにして頭の上をすべらせた。その優しい手つきに、Aの目からは思わず涙が溢れてそうになって、ぐっと息を詰める。それでも耐えきれず、ぽたりと手の甲に涙がこぼれ落ちた。
「……ええよ、泣いても」
志麻の声があまりにも優しいものだから、またぽたりぽたりと涙が落ちていく。泣いちゃダメだ。迷惑かけるだけなのに。それなのに、止めようとすればするほど涙は止まってくれない。
悲しいわけじゃないのに、どうして涙が出るんだろう。Aは自分で自分が分からなかった。
どうして皆、優しいんだろう。いままで、こんな風に気づいてくれて優しくしてもらったことなんてほとんどなかった。
嬉しいのか、この優しさを手放そうとしているのが辛いのか、いろんなことを考えすぎて溢れてしまったからなのか。とにかく、なにも聞かずに隣にいてくれる志麻の存在が、いまはありがたかった。
彼はなにも聞こうとしなかった。隣に腰かけて、ただ頭を撫でてくれているだけだ。こちらが話すまで、待っていてくれているのだろう。それが分かると、また涙がでた。
「………どうして、そん、なに……優し、いんですか」
しゃくりあげながらAが聞くと、志麻の手が止まった。
「優しくなんかないやろ。悪魔なんてな、人間をエサにするやつなんやで？」
Aはぶんぶんと首を横に振った。そんなことない。最初はそう思っていたけれど、でも違った。
魔物に襲われて死にかけたところを助けてくれた。一緒にご飯を食べてくれた。友人のことを埋葬してくれた。そして、こうやって頭を撫でてくれる。それのどこが優しくないと言うんだろう。
「それでもAが俺らのことを優しいって言ってくれるなら、きっと俺らがそうありたいと思ってるからやろうな」
何を言っているのか、正直あまりよく分からなかった。優しくありたいと思ったから？どういうことなんだろう。
不思議に思っていたら、だんだんと涙も落ち着いてきた。
「どういうこと、ですか？」
と小さく問いかけると、志麻は「そうやなぁ」と言って言葉を選ぶような仕草をした。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
