. ページ14
あの悪魔たちに禁忌の子を奪われてから、1週間が経った。
ルシファーは手下の魔物たちを使って、血眼になって彼女を探していた。
やはり、悪魔たちの狙いは禁忌の子の奪還だった。あの緑目の悪魔は見たことがある。昔、殺したと思っていたが、とどめを刺し損ねていたらしい。まさか、自分が殺し損ねた相手に獲物を奪い返されるとは思いもよらなかったのだ。
ルシファーは過去の自分を呪った。あの禁忌の子を食うことが出来れば、魔力は増し、ルシファーの目的達成は確実なものとなるからだ。
「まだ見つからないのか」
苛立ちを隠しきれないルシファーに、部下の魔物は震え上がった。その反応にも、ルシファーはイラつく。
「は………はい、あの悪魔たちが寝床にしている屋敷ももぬけの殻でして………」
「そんなことは前にも聞いた。何としても、禁忌の子を私の前に連れてこい。良いな」
「はい、何としても、連れてまいります」
逃げるようにして去っていった部下を見送り、ルシファーは大きくため息をついた。あの禁忌の子は、ずいぶんと大切にされているらしい。面倒なものだ。
屋敷にも戻っていないのであれば、奴らはいったいどこに身を隠しているのだろうか。黄色の悪魔は手負いだし、人間を抱えてはそう遠くまでは行けまい。
「ずいぶん手こずってるみたいやね」
「………誰だ」
ルシファーが顔を上げると、そこには見たことのない魔法使いが立っていた。白髪で高身長。気配もなくこの部屋に侵入してきたところを見ると、なかなかの実力者だと言うことが分かる。ニコリと微笑む顔は、まるでルシファーの胸中を嘲笑っているかのようだ。
「luzやけど」
「そのluzとやら。俺に何の用だ」
「ルシファー………やったっけ？禁忌の子がどこにいるか、知りたくない？」
「知っているのか？」
「知ってるからわざわざ教えに来てやったんやけど？」
この魔法使いは、ルシファーを前にして、ずいぶんと大きな態度を取ってくる。ルシファーはむっとしたが、それでも相手はいま喉から手が出るほど欲している禁忌の子がどこにいるのか知っているという。ぐっと堪えて、咳払いをした。
「ほう。どこにいるんだ」
luzと名乗った魔法使いの唇が、美しい弧を描いた。
「………教えてもええけど、見返りは？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 939人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
