逃避行 ページ1
森の中を、5人が進んでいく。
とは言っても、うち一人は意識を失っており、3人が交代で担ぎながら歩みを進めていた。洞窟を出発してから丸一日が経っていた。
先程ようやくセンラが目覚め、立って歩けるまでに回復したのだ。彼の足取りはまだふらついているが、徐々に戻ってくるだろう。
4人とも腹を空かせていたが、ここには栄養となるものもなく、ただ黙々と歩くことだけに集中していた。
もちろん、魔法を使って高速移動することも考えたが、毒が回っているAの体に負担をかけすぎるというので全員で歩くことになったのだ。
「ゴーストシップってどこにあるん？」
ひと通り説明を聞いたセンラが、額に汗を滲ませながらうらたに問いかけた。
「…………海の上だ」
「はぁ？まじ？」
「運がよけりゃそこら辺の港に停泊してる」
「じゃ、今だけは神様に祈るしかないって？」
うらたから見れば、いままで魔物の襲撃に見舞われなかったのが、むしろ奇跡だ。
そのうえゴーストシップが順調に見つかるなんて、思ってはいなかった。けれど、Aを助ける術はそれだけだ。
ただ、運がいいことにいまはハロウィンの時期だ。どの船も人間界から獲物をさらってきていて戻ってくる頃だろう。ゴーストシップはその時期は港に停泊しているのは知っている。
その可能性にかけるしかなかった。
どうにかして、船を見つけるほか手立てはない。
4人は、ひたすら港のある西に向かって進んでいた。森を抜けた先には、下界でいちばん大きな港町がある。
港は、ゴーストシップだけでなく、人間界に向かう魔物の船や、さらってきた人間を連れていく船、貿易船なんかも行き来している。
「地図でいえば、あと少しだし、あと2時間もあれば着くやろ」
地図を見ながら、志麻が言った。運良く、本当に運良くゴーストシップが見つかればいいが、そうでなければ何日間かそこに滞在することになる。
「…………ん、」
うらたの腕の中で、Aがうめいた。
苦しいのか、眉間にしわをよせ、しっとりと汗をかいている。
毒が回ってきているのだろう。昨日よりも確実に首筋の痣は濃くなっている。
「………早くしないと、Aが」
坂田は気が気じゃないようで、ずっとAのことを心配している。坂田だけでは無い。ここにいる全員が、Aを心配そうな顔で見つめるのだ。
うらたはAを抱えなおした。
頑張ってくれ。お前の居場所は、ここにあるのだから。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
